灰色の坂道
正夢注意報、解除中。
陰鬱な、朝だった。
今日の空は、見事な快晴。
ジリジリと暑い日差しが降り注ぎ、もう9月も半ばだと言うのに、汗が噴き出してくる。
そんな暑い中、俺は通ってる学校の制服を嫌々羽織り、遅刻する気満々で、ノロノロと通学路を歩いていた。
憂鬱だった。
俺には夢が無い。
目標はある。
ただ、その目標の為に何かをしようとする気は、とっくに無い。
ただただ、家と学校を往復し、何かに呪われているかのような目つきで授業を受け、家に帰れば自室に引きこもり、ネットに浸る。
それだけだ。俺の毎日を説明すると、それ以外の説明は出来ない。
いちよう妹も居るが、話なんて殆どしてない。
親は出稼ぎに出てる為、年に数回くらいしか会わない。
でも、俺はこんな毎日に満足していた。
ネットでなら、俺に共感してくれる人がいる。
ネットでなら、俺はそこそこに人気のある人間になれる。
ネットでなら、俺の愚痴を聞いてくれる人がいる。
もしかしたら俺は、寂しかっただけなのだろうか。
1人で過ごす事に、いつの間にか慣れ、いつしかそれが当たり前になってしまった。
今では別にどうでも良くなっているが、
記憶を辿れば、俺は確か、家族の事が大好きだった様な気がする。
毎日妹と一緒に遊び、泥んこになって家に帰り、家族で食卓を囲み、風呂に入って、皆仲良く寝る。
そんな毎日が大好きだった……筈だ。
しかし今では、妹は妹で少し引きこもりがちになり、父親が死んだ事によって、母は出稼ぎに出て、家族は実質、バラバラだった。
思えば俺は、なんでネットの中に閉じこもったのだろうか。
もはや全く興味のわかない家族の昔を考えながら、俺は最後の坂を上る。
この坂を登り切れば、俺と妹が通ってる学校が見えてくる。
俺は、もはや興味の無くなってしまった家族の昔を頭から投げ捨て、のろのろと、最後の10mを登った。