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久しぶりに、父と母と三人で話す機会があった。話題は、私の進学のことだ。
「それで、冬嗣はどうしたいんだ」
と父に聞かれたので、私はすぐに答えた。もう腹は決まっていた。
「進学したい。俺、ちゃんと勉強するから」
そう言うと、父は考え込んでしまった。代わりに、母が口を開いた。
「行きたいなら行かせてあげるけど、浪人させる余裕はないよ」
「分かってるって。もし落ちたら、滑り止めで我慢する」
私も馬鹿ではないので、滑り止めのことはきっちり考えている。今の私でも合格できる程度の大学だ。距離も近く、家からでも通うことができる。
父も母も、私の意思にはうるさく言わなかった。だから、すぐに終わってしまった。ところが、春臣との話はなかなか終わらず、私はずっと部屋で彼を待つことになった。あまりにも暇だったので、教科書を開いて復習をした。
やっと戻った春臣は、明らかにげんなりしていた。
「親父たち、うるせぇよ」
開口一番に、春臣はそう言った。私は苦笑させられた。
「春臣のことが心配だからだろ」
「でも、フユはすぐに終わったじゃねーか」
「そりゃ、俺は信頼あるからな」
そう言うと、春臣はがっくりと肩を落とした。わざとらしいので、それが演技だとすぐに分かる。私はまた笑わせられた。
少しだけゲームをして、私は勉強机に向った。まずは教科書を復習しよう。幸い、一年生の教科書は捨てていなかった。これが終わったら、参考書でも買って解こう。大学の過去問は、それからでもいいはずだ。
いざ本腰を入れると、これまで分かったつもりになっている個所の多いことに気づいた。特に理数系科目で、その傾向が顕著だった。運の良いことに、私の担任は理数系だ。お願いして、個人的に教えてもらおう。彼女とは仲が良いのか分からない微妙な関係だが、最近は言葉を交わすことが多いので引き受けてくれるはずだ。
翌日に頼むと、先生は引き受けてくれた。
「だけど、生物以外はどうかなぁ」
「いや、それで十分です。俺、文系だから物理とか化学はいらないし」
「そうは言っても、数学があるじゃないか」
「俺、数学は得意なんです」
かくして、私は本格的に受験勉強をすることになった。他の先生も手が空いていたようで、進んで私の指導を引き受けてくれた。ありがたいことだ。父と母は何も言わないが、春臣は私を応援してくれている。本当にありがたいことだ。