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冬休みが終わり、私は久しぶりに部活に出た。矢地さんも来ていた。さすがに休みの間は何もなかったようで、少し顔色が良くなったように見えた。
久美とも久しぶりに会った。長かった髪を、ばっさり切っていた。春臣と三人で映画に行こうと誘われたので、私が予定をメールすると言った。だが、自分がしたいと久美が言ったので、やってもらうことにした。
しかし、当日になって待ち合わせ場所に行くと、誰も来なかった。春臣に電話すると、逆に怒られてしまった。詳しく聞くと、私が家を出たあとになって、場所を変更したいとのメールがあったらしい。履歴を見たが、私には送られていなかった。
今からでは間に合わないので、私は仕方なく家に帰った。あとで、久美から謝罪の電話があった。久美はしおらしい口調で、
「ごめん、冬嗣。春臣に言えば、冬嗣にも伝わると思ってた。全部、あたしが悪いの。今度からは、ちゃんと連絡するから」
と平謝りだった。
低姿勢にされると、私としても許さないわけにはいかない。それに、故意にやったことではないのだから、あまり責めることもできない。
「いいよ。俺でもそうしたかも知れないし。それより、映画はどうだった」
「うん。楽しかった」
遠慮がちだったが、かなり充実していたのだろう。久美の声は浮かれていた。
私は、多分そういうことなのだろうと勘づいた。だから、それとなく久美にそうだと告げてやった。
「俺、大学受けるから、しばらく遊べないかも」
「えっ、そうなの」
「うん。だから、これからは春臣と二人で遊んでいいよ」
「……あ、うん」
久美は黙り込んでしまった。全然それとなくできなかった。
「別に、俺はいいから。怒ってないから」
そう言ったが、電話は切られてしまった。受話器からの機械音を聞くと、あんなことは言うべきでなかったと後悔した。あれでは、久美が私に負い目を感じてしまう。きっと、私たちの関係はぎこちない物になるだろう。
しかし、それは久美の行為と、私の失言によって招かれた結果だ。どんな場合においても、自らの行動による結果は受け入れなければならない。それが責任という物だ。