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 休日に、春臣は久美とどこかへ出かけるそうだ。だが、当日の朝になっても春臣は冴えない顔をしている。何かあったのかと聞くと、口籠ってしまった。

「いや、何でもねーよ」

 と言ったが、それが嘘だということはすぐに分かった。これでも十七年、春臣とは双子をやっている。春臣は、嘘をつくのが下手だ。そして、隠し事はもっと下手くそだ。

 しかし、私は強いて問い質さなかった。春臣は、自分のために嘘はつかない。きっと、私に関わることを隠しているのだろう。私にとって良くないことを、春臣の口から言わせるのは忍びない。あっちが気を遣ってくれるのだから、こっちもそうするべきだ。

 私は、春臣を見送った。それから午後になる前に学校に行き、部室で日誌を書いた。待っていたわけではないが、矢地さんがやって来た。眠そうにしている。挨拶をしたが、会釈すらしてくれなかった。

「春臣くんは、来ていないの」

「あいつは、園芸部じゃない。ここには来ないよ」

 私としては、至極当然のことを言ったつもりだった。だが、矢地さんはそれがお気に召さなかったようで、つまらなそうに溜息をついた。

「春臣くんは、どこに行ったの」

「知らない」

 本当は知っていたが、それを言うと他のことも聞かれそうだったので止めた。

「友達と行ったの」

「うん。近所の友達と」

「それって、平田だよね」

 意外だった。平田とは、久美のことだろう。矢地さんと久美には、接点があったのだろうか。気になったので、聞いてみた。

「クラスが、一緒だから。あんまり仲良くないけど」

「性格とか、合わなそうだからね」

 会話はそこで途切れてしまった。私はやることを終えていたので、片付けをして帰った。校門のところで、槙原くんと一緒になった。槙原くんも部活終わりらしく、自然とお互いの部活のことが話題になった。

 サッカー部の話が終わると、園芸部の話になる。聞き役と話し役が、交代する。

「園芸部に、矢地って女子がいるだろ」

 槙原くんの口から、その名前が出るとは思わなかった。失礼だが、私は矢地さんのことを、あまり学年で知られていない人だと思っていたからだ。

 ところが、槙原くんは矢地さんに詳しかった。いや、それを詳しいと言っていいかどうかは微妙だ。槙原くんの語った矢地さんの人物像は、すべて噂でしかなかったからだ。それでも私は耳を傾けざるを得なかった。

「あいつ、転校生なんだよ。去年の終わりくらいに、県外からこっちに移ったらしくてさ。で、その転校の理由が、ちょっとさ……」

 槙原くんは周囲を窺い、声を小さくした。

「いじめが原因なんだってよ」

「矢地さんがいじめれらたのかよ」

「まあ、そうなんだけど……それがまた変な話でさ」

 柳葉から聞いた話なんだけど、と前置きしたうえで、槙原くんは話し始めた。

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