背後から迫る××××
あらすじにもあるように気持ち悪いです。
ご注意ください。
男は一人で歩いていた。
辺りはすっかり暗くなり、街灯が照らす場所以外は黒一色で塗りつぶされている。
―結局今日も飲みすぎちまったなぁ
男は酔った頭でふとそんな事を考えた。
最近は出世や結婚関係で飲みにいく事が多くなり、出費も嵩んでいる。おまけに男はまだ下っ端なので、おごらされる事も多い。
―財布の中月末までもつかなぁ
さっき店を出るときに財布を見ると、万札が数枚と小銭が少量だけだったので今月はかなりピンチなのだ。
「はぁ・・・」
男が思わずため息を着いたとき、後ろから妙な音が聞こえた。
カサカサ・・・・カサカサ
「? おい、誰か居んのか?」
振り向いて呼びかけて見るが、幾ら目を凝らしても見えるのは闇ばかりで、人の気配すらない。
「気のせいか・・・?」
そう思い前を向くと、またあの音がより近くで聞こえた。
カサカサ・・・・カサカサ・・・・
「何なんだ!?酔いすぎたのか?」
男は少し薄気味悪く思い、歩む速度を速めた。
音は徐々にに聞こえなくなり、ほっと息をついた束の間。
音も男と同じように近づいてくる速度を速めてきたのだ。
まるで自分を追いかけてくるようなこの音に、男は得体の知れぬ恐怖を感じた。
「な、何なんだよぉ!来るんじゃねぇ!!」
胸の中で渦巻く恐怖心が膨らみ、男は遂に走り出した。
走りながら時折後ろを振り返るが、やはりそこには何も無い。
ただ音だけが男を追いかけてくるのだ。
走り始めて暫く経った。
「はぁはぁはぁ・・・」
足を必死に動かそうとするが、最早体が言う事を聞かない。元々酔っていたせいもあり、体力が限界を超え男はよろめいた。
「あっ!」
慌てて体制を戻そうとするが、すでに遅く派手に転倒してしまう。
「クソ!」
男が悪態をついたその時、足元に何かが寄ってきた。
「ひぃ!」
男は悲鳴を上げて後ずさったが、それがただのある昆虫であることに気づき、ほっと一息つく。
「なんだ、びっくりさせんなよ・・・」
しかしその昆虫は虫といえど、余り触りたくなるような部類のものではなかったので、男は触れないよう気をつけながらソレを追い払った。
この時、男はまだ気付いていなかったのだ。自分を追いかけてきたのはこれの大群だったという事に。
手で払ってもなかなか退かないそれに男は苛立ちを募らせた。
「あーもう、目障りだから早くどっかいけ・・・・・・・・よ?」
男はそれを怒鳴りつけたとき、ある違和感を感じた。
なぜなら一匹だと思っていたそれの後ろには、同じそれが大群となって男を見つめていたのだから。
いつの間にかいた、その昆虫は闇の中異様に目を光らせじりじりと近づいてくる。
男はその異様過ぎる光景に絶句し、後退した。
が、背中に壁に追い込まれ完全に逃げ場を失う。
絶望にも近いものを感じた男は、目の前に光る目を呆然と見つめた。
「なんで・・・」
男は最後になるであろう言葉を、声を振り絞って叫んだ。
「なんでゴキブリがこんなにいんだよぉ!!!」
その瞬間
ザザザザザーー!!!
男の叫びを合図にしたかのように、ゴキブリの大群が男に押し寄せ、あっという間に男の体はゴキブリに埋め尽くされた。
「ぎゃぁぁああああ!!」
声も虚しくゴキブリは容赦なく男に襲い掛かった。
口などの、ありというあらゆる場所から体内に侵入し、男の体を貪り始める。
カサカサ・・・・・ムシャムシャ・・・・ベチョッ・・・・・・・クチャクチャ・・・・・ベリッ・・・・・カサカサ・・・・・・
「・・・・・・!!!」
ゴキブリはまるでそれがご馳走だと言わんばかりに一心不乱に男の体を、臓器を貪り尽くしていた。
男は痛みの余り呼ぼうとしたが、次々と入ってくるゴキブリのため、もはや声を出す事もできない。
せめてどういうことになっているのか見ようとしても、視界に埋め尽くされていくゴキブリの数は増えるばかりだ。
そして男は凄まじい痛みとともに自分の体がゴキブリによって食べられていくのを、薄れる意識の中で微かに感じ取っていた・・・・・・・・・
それから暫くの後、ゴキブリは何事も無かったかのように闇に消え、そこには体と臓器が食われ、殆ど骨しか残っておらず、沢山の卵を産み付けられた男の死体がポツンと取り残されていた・・・・・
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