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ネクストランド

作者: 犬座いい
掲載日:2026/11/09

最後まで読んでくだされば幸いです。

           1


ここはネクストランド。

現代日本において、成長・・・次の扉を開くために作られた施設。この施設は日本経済を建て直した。


そして今日こそ、僕がネクストランドに入る日・・・20歳の誕生日である。


ネクストランドの中身は謎に包まれている。国民全員に生涯一度きりのネクストランドの使用が義務付けられている社会であるが、それを体験したものは誰1人としてその内部を話さない。


一方で20歳未満の大学生や高校生・・・彼らの間ではある噂が立っていた。


   “ネクストランドは死の施設である”


かくいう僕もその噂を少々信じていた。ネクストランドを使用した大人たちがその内部も何も話さないのだから仕方のないことだ。情報がそれしかない・・・一つの・・唯一の内部と思われる情報。僕たちは目の前のその情報を信じることによってネクストランドに対する知的欲求を満たしていた。


そんな中、ネクストランドに入る・・人生の中で一度しか入れない日が来た。


僕は目の前に広がる大きな建物を見つめた。


ちょうど今、午前8時00分になった。日本中から集まったであろう多種多様の20歳の若者達が一斉に入場を始めた。勇み立っている者もいれば、ワクワクしてそうな人もいた。中には泣いている人もいた。かくいう僕もかなり緊張している。今や全国に広がっている出所不明のネクストランドの死の噂。その元凶であるネクストランドが目の前に広がっているのである。


周りを見渡した。さっきまで多くの人がいたがもう誰もいない。ゲート前に立っていた係員が僕の名前を呼ぶ。


僕はゲートを通った。


           2


ネクストランドは死の施設・・僕たちの噂は違っていた。ネクストランドの中には大きな建物が一つある・・一つしかないというのが正しい。そしてその建物の中に何があるのか・・結果から言うと死の施設ではなかった。中にはジェットコースターやコーヒカップ・・ただの遊園地だった。それは死のランドでもないし、何の変哲もない場所だ。泣いている人は誰もいない。


僕は入る時、一切れの紙をもらった。他の人ももらっているようだった。


   “午後4時00分に19階に来るように”


周りを見たがそれぞれ時間は違うようだ。


「午後4時...」


           3


1、2階が遊園地、3階は全品無料のフードコート・・・4階は・・・スキー場。僕は遊び尽くした。ふと時計を見た。


「午後3時50分・・」


配られた紙に書かれていた時間以外は入れない5階以上の階に僕は向かった。


「これを・・」


「どうぞ、こちらへ」


エレベーターに乗り19階のボタンを押した。


僕は19階に向かった。


           4


「ここが・・・」


展示室があった。


そこには日本経済の成り立ちやどの会社がいつどこと何をやったのか・・などと数多くのことがこと細やかに書かれてあった。


展示は規模が大きく、ワンフロア全てが展示になっていた。僕は不気味な気持ちになった。しかし、これまでの遊園地での出来事の余韻が・・いや・・・それらの事実から逃げようとしていたのかもしれない。

 

そうして歩いていくとトイレと“出口”と書かれた一つのドアがあった。僕はトイレを済ませ、部屋に入った。


           5


ドアの先には一つの機械があった。直方体の四角い箱。周りには何もない。


脳裏にあることが浮かんだ。


   “ネクストランドは死の施設”


僕は嫌な予感を感じた。逃げたかった。

しかしすでにドアは開かなかった。


ただの機械とただの肉塊


僕は死にたくなかった。


僕は泣いた。ただひたすらに泣いた。


これまで抑えてきた恐怖がどっと押し寄せた。


ただ僕は泣くことしかできなかった。


           6


時計がない部屋だからこそ、俺はどのくらい泣いたか分からない。そのまま泣き疲れて寝てしまった。


覚悟を決めた。


この機械の中に入ることを。


震える体を鼓舞し続けた。


「誰も死なない。実際、みんな生きてるじゃないか!」


機械に入る直前、思い立った。


紙に書くこと。


齢20年間の気持ちを。後悔なく。


僕の手元には紙がある。ペンがないのは血で代用できる。


僕は書いた。


これまでのことを思い出しながら。


           7


34年後、彼には妻と今日20歳になる子供がいた。


「誕生日おめでとう」


「ありがと!パパ!」


「今日はネクストランドに行く日だな」


「そういえば・・そこって・・死の施設なの?」


「・・・・死の施設?」


彼は忘れていた。


ネクストランドで遊んだ記憶から、機械から出るまでの全ての出来事を。そして過去に起きた、自らに不都合な事実を。


そんな中、彼には漠然とした不安があった。


そんな時に彼はあるものをよく見る。


        ”ありがとう“


そう、血で書かれた紙だ。


           8


あの施設で行われていることは誰も知らない。


    “ネクストランドは死の施設”


そう噂が立ち始めたの理由もわからない。


誰が噂を広めたのかもわからない。


しかし今、必ずネクストランドに行かなければいけないという義務とそれを使用することで経済が良くなり、人々が幸せになった。そのような事実しか無い。

お読みいただきありがとうございます。

評価の方もよろしくお願いします。

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