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聖装士学園の異端者  作者: 綿砂雪
第三章
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第七十八話 決戦前夜

ノリと勢いで番外編として『聖装士学園の異端者・えくすとらでいず!』というシリーズを作りました。不定期更新になりますが、気になる方は覗いてみてください。

それでは本編をどうぞ。

夕食を食べた後、アランはアリシアの部屋に来た。

朝と同じくテーブルで向かい合いながら話し合っている。


「……で、これが俺の予測だ。百パーセント合ってると断言していい。奴が首謀者の一人だ」


「確かに根拠は十分ですね。まさかそのような真実があったとは……本当に盲点でした」


アランが告げた真実にアリシアは衝撃を受けていた。


「それにしても、よく気が付きましたね。リフレイムの騎士団や警備隊が総力を上げても全く進展しなかったと言うのに。貴方一人で全てを解き明かすなんて」


「既に皇国側が可能性を絞ってくれていたから、こんなに早く気付けたんだ。一人じゃここまで上手くいかない」


アランは可能性を一から試していたのではない。既にある下地を利用して調査を進めたからこそ早く片付いたのだ。


「……それで、こっからが本題だ。どうやって奴を捕らえるか。それとその間、周りをどうするかだ」


「周りを?」


「首謀者は突き止められたが、まだ残ってる者があるだろ。脱獄した二百人以上の犯罪者。奴らの行方だけは未だに不明だ。奴らがいつ誰に危害を及ぼすか分からない。それ以外にも戦闘による周りへの被害をどう抑えるかとか……対策すべき事はある」


「そうですね。具体的にどうするつもりなのですか?」


「それも含めて俺の計画を話そう。かなり大規模な計画だからアンタの力も借りることになる」


「構いませんよ。聞かせてください」


アランは考えていた計画を話した。

決行日は明日であること。そのために必要な事前準備や打ち合わせ、その他諸々。

全てを話し終えた後、アリシアが口にした言葉は一言。




「貴方、正気ですか」


「………アンタの言いたい事は分かる。俺だってフィーネには悪いと思ってるよ」


「ならどうして──!」


「それが一番手っ取り早い解決策だから。これ以上の理由がいるか?」


「それは……」


アランの言葉にアリシアは押し黙る。


「俺は最初からフィーネを利用するつもりだった。最初は情報源にでもなればと思って近づいたけど、こんな形で利用する事になるとは思わなかったな」


「……貴方はそれで良いのですか」


「良い悪いの話じゃない。出来ることは全部やるしかないんだ。この方法なら死傷者は最低限に抑えられる。少なくとも想定してる魔装士による被害は俺とアンタを除けばゼロだ。それにフィーネを利用すると言っても、アイツが怪我するわけじゃない。(にが)す事も考えてる。なら十分だろ」


「そういう問題ではありません。貴方は彼女に真実を教えないつもりなのでしょう?今回の件はきっと彼女の心に深い傷を残す。巻き込むからには彼女にも真実を伝えるべきです」


「それは無理だ。もしフィーネが混乱したら作戦どころじゃなくなる。それに今回の件は最初からどう足掻いてもフィーネに害が及ぶように出来ている。もう諦めるしかないんだよ」


テーブル上にある紅茶を一口飲むと、


「フィーネの事は事件が片付いてからだ。心の問題は後からどうにでもなる。今回は理解してくれ、アリシア」


「……分かりました。すみません、私が甘かったです」


「謝るなよ。アンタにも悪い事をしたと思ってる。だが悪意を絶やすのは必ずしも正義や善意じゃない。悪意に立ち向かうには時として悪意が求められる。相手がテロを目論む魔装士なら尚更、半端な覚悟では挑めない」


アランは椅子を下げて席を立った。


「ほら、行くぞアリシア。計画について国王様に交渉しなくちゃいけねぇ」


「そうですね。行きましょうか」


事件解決を賭けた決戦のために遂に彼らは大きく動き出す。

決戦は明日。ここで勝てるか否かでリフレイムの未来は決するのだ。





***





同時刻、ある部屋の中にて。


「…………これで報告は以上ですが、そちらはどうです?」


「相変わらずつまんねぇよ。昨日は楽しかったのに……消化不良も良い所だぜ」


その者が持つ結晶型の通信魔導器から荒々しい声が聞こえてきた。声の主はヴァッシュ・ガーバランドだ。


「まだ根に持っているのですか。あのまま放置すれば貴方はタダでは済みませんでしたよ」


「むしろそれも含めて戦いだろうが!互いに血を流しながら命懸けでやり合う!戦いはこうでなくちゃなんねぇ」


「相変わらず理解し難い価値観ですね。貴方は今回の計画のために欠かせない戦力です。もう少し自分の戦力的価値を自覚して行動してください。まぁ貴方に言っても無駄でしょうが」


「決まってらァ。それで、これからどうするんだ。俺を呼んだからには話があるんだろ?」


「ええ。海礼祭は明後日です。流石に当日に行動を起こすとは考えにくいですから、おそらく明日には何か仕掛けてくるでしょう。どのような行動を起こすのかは分かりませんが、場合によっては計画を実行する必要があります」


「だから皇城の近くで待機してろって事か」


「そうです。頼みますよ、ヴァッシュ」


その者はそう言って通信を切ろうとするが、


「……あぁ、それともう一つ。昨日は時間が無くて聞けませんでしたが、アラン・アートノルトと戦ったのでしょう?彼はどうでしたか、強かったですか」


「アイツはヤバいぜ。ありゃ人間の姿をしたバケモンだ。何もかもが狂ってやがる。よくあれでマトモに生きてこられたモンだ」


「聖裝具は見られましたか?彼はいつも聖裝具を使わないそうですが」


「見れなかったな。だがそれを抜きにしてもとんでもねぇ実力だ。アイツに勝つならマジでやらねぇとな」


「それは面倒ですね。ですが敵は彼だけではありません。アリシア・エルデカもいる」


「アリシア・エルデカ?あぁ、確かエルデカ王国の王女だったか」


「そして唯一アラン・アートノルトを打破した聖裝士でもあります。単純な戦闘能力だけなら彼女の方が上の可能性もありますよ」


「そうかそうか………そりゃあいい」


「良くありませんよ。まったく」


通信の先では今頃ヴァッシュは笑っているのだろう。

戦いを好む彼にとって強敵の訪れは吉報である。その者は大きくため息を吐いた。


「とにかく、計画通りに頼みますよ。そうすれば貴方の大好きな強者との戦いが楽しめますから」


「あぁ任せな。そっちもしくじるなよ。()()()()、楽しみにしてるぜ」


その者は通信を切ると魔導器を棚にしまった。

直後、部屋の扉がノックされた。誰か来たようだ。


(さて、貴方にこの厄災を越えられますか?アラン・アートノルト)


その者は密かに笑みを浮かべながら、部屋の扉を開けた。







そうして時を経て翌日。

後にリフレイム皇国の歴史に刻まれる皇国史上最大の戦いが遂に幕を開ける。

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