第六十九話 リラックスタ〜イム
「え、お前リオだよな!?そっくりさんとか偽物じゃなくて本物のリオ・ロゼデウスだよな!?」
「ああ、その通りだが……本当にどうして君がここにいるんだ」
全くの予想外の遭遇にアランとリオが困惑していると、
「ちょっとちょっと何叫んでるのリオ。ここ皇都の中って……えぇぇぇぇぇッ!?」
叫び声を上げながら、リオの後ろから黄緑の長髪をした少女が現れた。
フィアラ・ミシリス。アランの友人の一人である。
「なんでアランがここにいるのよ!?」
「フィアラまでいたか」
「ああ、ちなみにアシュリーとレオンもいるよ。すぐに二人もここに──」
「うわっアランだ」
控えめに驚きながら紫の短髪少女、アシュリー・フォンラッドがやって来た。
「どうしているの?もしかしてこっそり私たちに付いて来てた?」
「んなわけあるか。俺も今めちゃくちゃ驚いてるよ」
「じゃあホントにただの偶然なん──」
「は?え、えぇぇぇぇッ!?なんでアランが──!」
「黙れレオン。流石に4回目はいらん」
最後にこの場にやって来た金髪少年、レオン・アルバート。
彼も同じく驚きの叫びを上げようとしていたが、流石にしつこかったので先にアランが手でレオンの口を塞いだ。
「ちょっ!口を塞ぐなアラン!」
「だって四度目だぞ?俺もリオもフィアラも同じ反応してんだから。これ以上やったら周りに迷惑だ」
「やっぱりボクだけ扱いがおかしい……」
「気のせい気のせい!」
笑ってアランは言ってのける。
「それで、どうしてお前らはここに?」
「旅行だよ。前に言っていただろう?皆で休暇中に旅行に行かないかって」
「あーそういや言ってたな。って事はその行き先が」
「ああ。リフレイムを行き先にしたんだ。ちょうど海礼祭があるって話だったからね。年に一回の大きなお祭りだし、せっかくなら行ってみようって事になったんだ」
休暇に入る前に話していた皆で旅行に行くという計画。それが知らない間に実行されていたらしい。
四人とも私服姿なのも旅行中だからか。
「本当は君も連れて行きたかったけど、長期休暇に入るや否や姿を消したから、仕方なく僕たちだけで行く事にしたんだ」
「そうか。お前からすればそういう状況なるのか」
アランがローヴェンからの国王命令でリフレイムに向かっていることは他の誰にも教えていない。リオたちからすれば突然アランがいなくなったという状況だったのだろう。
「君はどうしてここにいるんだ?服も学園の制服だし、プライベートってわけじゃなさそうだけど」
「実際その通りだよ。長期休暇初日のド深夜にアリシアが部屋に来て、そのまま王城に連れてかれた」
「王城!?貴方何やらかしたのよ」
「なんで俺が罪を犯した前提なんだよ」
心外である。
「罪を犯したわけじゃない。国王命令だ。国王からアリシアの騎士として、アリシアと一緒に海礼祭に参加しろって。それでリフレイムに連れてこられた」
「なるほど。アランも大変だったんだね」
ぽんぽん、と肩を叩きながら哀れみの目を向けるアシュリー。
「大丈夫だよ。アランの分もしっかり私が休暇を楽しむから」
「何も解決してないだろそれ」
それはただの休暇マウントだ。
「いよいよアランも国王様の命令で動くところまで来ちゃったのか。アリシア様と一緒に来てるって話だったけど、そのアリシア様はどこにいるんだ?」
「皇城にいるよ。俺がここにいるのは自由時間だからだ。暇なら観光しようと思ってな」
本当は事件解決のために皇都を回っているが、それを旅行中のリオたちに教えては余計な不安を与えかねないので、適当な嘘を吐いた。
だが、それが良くなかった。
「そうか。なら君も一緒に皇都を回らないか?」
「へ?」
「自由時間って事は暇なんだろう?なら時間がある限りは一緒に遊んでもいいんじゃないか?」
「…………」
まさかそんな提案をしてくるとは思わなかった。
自由時間中のアランであれば遊びに誘っても問題ない。事情を知らない者からすれば、なんらおかしくない考えだ。
「えっと……それは……」
悩むアラン。
断るのは簡単だ。だがすぐに言葉が出なかった。
───遊びたい。
誘われた瞬間に強く心に芽生えた欲望。皆が遊んでいる中自分だけ仕事だなんて、そんな寂しいことしたくない。
そもそも俺は旅行に行く予定だったんだ。アリシアたちに阻まれたその計画が、一時的とは言え叶おうとしている。
(いやでも、ここで遊んだら拠点候補を回る時間が減るし……でもここで遊んどかないとマジでこの長期休暇が仕事詰めのクソみたいな日々になっちゃうし……ここまで頑張ったんだし、ちょっとくらいなら……いやいや!それで事件が解決できなかったら、それこそリオたちに迷惑がかかりなねない……!)
悩んで、悩んで、悩んで、悩んで、悩んで、なんとか捻り出した結論は───。
「───よし!皆で遊びに行こう!」
天秤は欲望へ傾いた。やっぱり長期休暇は遊んでこそだ。
「本当に良いのかい?」
「大丈夫大丈夫!それより俺腹減っててさ。お前ら昼飯もう食べたか?」
「いいえ。私たちもこれからよ」
「じゃあ一緒に食べにこう。俺この辺りのレストランとか詳しくないから、案内よろしく」
「はいはい。分かったわよ」
そうしてアランはリオたちと共に行動を始めた。どこのレストランに行くかは既に決めているらしく、フィアラが先導して歩いている。
ただレストランに行くと言っても直進する訳ではない。途中で面白そうな店や物が見つかるたびに足を止め、その店に寄ったりしていた。
「ここのお土産良いわね。帰るまでに何か買って帰ろうかしら」
「確かに。リデラさん達へのお土産に良さそうだ」
「そういやあの三人はいないのか」
「三人とも予定があったからね。リデラさんはこの機会に一度実家に帰るって言ってたし、ナタリアさんも何か用事があるらしい」
「ナタリアが用事か。何をするつもりなんだ」
「それが詳しく教えてくれなかったんだ。一人でひっそりやりたい事があるんだろうね」
「魔法生物の乱獲でもする気かよ……で、エレカは?」
「エレカさんは補習があるから時間が無いって」
「あーなるほど」
言われて思い出した。エレカは凄まじく勉強が苦手なのだ。
「この前の定期試験の結果が悪かったみたいでね。補習と課題に追われてるそうだよ」
「ありゃありゃ……可哀想に」
ある意味エレカの状況はアランと似ているかもしれない。
今も学園で勉強をしているであろうエレカに同情するアランであった。
「このアクセサリーショップ良い物置いてるじゃない!アシュリー、一緒に入りましょう!」
「え、私は別に……」
「貴方もちょっとくらいおしゃれに興味を持ちなさい。ほら行くわよー」
「わー誘拐されるー」
アシュリーがフィアラに連れられてどこかのアクセサリーショップに入っていた。
「慌ただしい奴らだな」
「女の子だからね。自然なことだよ。アシュリーは自分の外見に関心が無いみたいだけど」
「アシュリーはただ面倒くさがってるだけだと思うが……そういやレオン、お前はおしゃれな物とか見なくて良いのか──って、いねぇし」
いつの間にかレオンも店に入っていた。
「自分の外見への関心の高さと言い、なんと言い……アイツの方が女子っぽくないか?」
「ははっ。まぁレオンらしいと言えばそうだけどね」
二人は店の外でフィアラたちの買い物が終わるのを待つことにした。
アランは適当に街を眺め、リオは何故か思案顔をしている。
会話が無い状態が続いたのは一分ほど。再びリオが口を開いた。
「……アラン、一つ聞いて良いか」
「良いけど。なんだよ、改まって」
聖装具の件を含め、リオとはそれなりに秘密を共有しているが、今更改まって聞かれることがあったか。
少しの間を挟んでからリオは問う。
「…………君にとって、人を殺すというのはどういう事なんだ?」
「…………………」




