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聖装士学園の異端者  作者: 綿砂雪
第三章
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第五十七話 休暇だ!自由だ!王命ダァ!?

こんにちわ、綿砂雪です。

しばらくリアルが忙しくなるため、投稿頻度が落ちます。すみません。

時間と元気があれば続きを書きます。気分次第で他のシリーズも書いたりすると思うので、これからもよろしくお願いします。

それでは本編をどうぞ。

長期休暇、この言葉を聞いて不快に思う者などおそらくこの世には存在しないだろう。

日々の勤めを忘れ、自由に過ごせる休日が連続するのだ。遠出して旅行に行くのも良し、家でゴロゴロするのも良し、選択肢は沢山ある。


そしてこのエルデカ王国立聖装士学園にもちょっとした長期休暇が存在する。

期間は八日間。生徒たちは実家に帰ったり、どこかへ遠出したり、逆にこの機会を利用して勉学に励んだり、自室でくつろいだりと、考えていたやりたい事を消化するつもりのようだ。


そんな連休の一日目が今日だった。生徒たちが早速思い思いの過ごし方を始める中、同じく連休中の生徒の一人であるアラン・アートノルトは………


「アラン・アートノルトよ。君に我が娘、アリシア・エルデカの騎士として、リフレイム皇国の海礼祭に出席することを命ずる」


「…………」


(どうして……こうなったんだ?)


エルデカ王国の王城、その中の玉座の間にて、国王もといローヴェン・エルデカより王命を下されていた。


***


時はその日の深夜三時まで遡る。

誰もが寝静まっているこの時間帯、彼もまた同じくベッドの上でスヤスヤと眠っていた。


学年実力序列第二位、アラン・アートノルト。特徴の無い黒髪に加えて、黒を基調とした長ズボンに長袖という寝巻き姿。相変わらず夜闇によく馴染む姿をしている。

こんな夜中にやるような事は何も無いので、こうして悠々と眠っている訳だが、今日はいつも通りとはいかなかった。


「…………ん?」


その時、アランは目を覚ました。ゆっくりと体を起こすと、まず視線をやったのは部屋の玄関扉。


「これは……()()()か?」


扉の向こう側、学生寮の廊下から魔力を感じたのだ。アランは人一倍こうした気配に敏感であるため、たとえ睡眠中でも気づけてしまう。

それが()()()()()()であれば尚のこと。


寝起きの頭で一人悩む。これはどうするべきだろうか。

まず断言できる事として、アイツは間違いなく俺の部屋に来ようとしている。この階の部屋に住んでいる生徒の中で、真夜中にアイツが関わる生徒なんて俺くらいしかいない。

そしてアイツが何のつもりで俺の部屋に来ようとしているのかも大体予想できる。その内容はほぼ間違いなく俺にとって不都合なものだろう。


「……寝たフリするか」


こういう時は無視するに限る。さすがにアイツも寝るべき時間に寝ている奴を無理やり叩き起こしてまで要件を果たそうとはしないはずだ。


決断したアランは再びベッドに身を預け、睡眠態勢をとる。それから約十秒後、この部屋に来客が訪れた。

コンコンッと扉がノックされる。次いで声が聞こえた。


「夜分遅くにすみません、アラン君。私です、アリシア・エルデカです。お伝えしなければいけない事があるので、扉を開けてもらえませんか?」


予想通りだ。廊下から感じた魔力で分かっていたが、やって来たのはアリシアだった。


「…………」


アランは動かなかった。ここで応答すれば間違いなく面倒事が起こる確信があったからだ。

故にこのまま寝たフリを貫き通す。そうすればその内彼女はこの部屋から離れて──


「起きているのは分かってますよ、先程から貴方の魔力反応がしていますから。寝たフリなんてせずに早く出てきてください。でなければ私の『奇跡』で扉を無理やり開けますよ?」


(凶暴過ぎんかこのお姫様)


残念ながら、このような演技が通じるほどアリシアは甘くなかった。

意識がある時と無い時では、人の魔力の波長は変化する。しかしその差は些細なもので、実際にそこまで感じ取れる者はそうそういないのだが、アリシアは感じ取れる側だった。


(どうしよ……窓から逃げよかっな)


「あと三秒以内に開けなかった場合は無理やり部屋に入ります。三……二……」


「はいはい分かった!分かったよ!開けたら良いんだろ!」


さすがはこの学園で一番アランと勝負してきた聖装士。逃亡の時間を与えることなく強行手段を取ってきた。

ぶっきらぼうな返事をしながら、渋々アランはベッドから出る。そして扉を開いた。


「ようやく開けてくれましたね。ひとまずこんばんわ、アラン君。このような時間に起こしてしまい、すみません」


アリシアは学園の制服姿をしていた。右手にはランタンを持っている。魔力を込めれば自動で明かりが灯る魔導器の一種だ。


「ああ、こんばんわアリシア。なるべく早く要件は済ませてくれ。まだ眠くてね、さっさと寝たいんだ」


「そちらの気持ちは重々承知しています。ですが貴方をこれ以上寝かせるわけにはいかないのです」


「へぇーお姫様は国民の睡眠を妨害するのが趣味だったのかー」


「そのようなつもりはありません。そもそも、普段は私もこの時間帯は寝ています。今日貴方の元を訪ねたのは相応の理由があるからです」


「なら早くその理由を話してくれ。もうこれ以上寝起きの頭を働かせたくない」


「貴方には私と共に()()へ行ってもらいます」


「へぇ、王城ねぇ……」


数秒感、その言葉を脳内で反芻して。


「…………は?」


反射的に出た第一声はそれだった。


「王城?アンタ今王城って言ったか?」


「ええ、言いました。貴方には私と共に王城へ向かい、我が父上、ローヴェン・エルデカ国王陛下に会ってもらいます。詳しい話は父上が直接お伝えしてくれます。なので早く身支度をしてください」


「…………」


「ちなみにこれは国王命令なので、貴方に拒否権はありません。理解しましたか?」


「…………」


確かに理解はした。だが納得はできない。

国王直々の案件だと?なぜ俺がそのような大層な話を受けることになっている。しかも知らんところで勝手に命令されているし。

アリシアが命令主ならまだ逆らえたが……流石に国王相手はマズい。今まで会ったことなんて無いから、どんな人なのか詳しくは分からないけど、怒らせたら最悪この国に居られなくなるかもしれない。


「はぁぁぁぁ……」


重々しくため息を吐く。まったく従いたくはないが、これに逆らう度胸は流石に無かった。


「……制服着替えるから待ってて」


「はい。ではここで待っていますね」


扉を閉めると、アランは再びため息を吐く。

せっかくの長期休暇の初日だと言うのに、なぜこのような目に遭うのか。不平不満を言えばキリが無いが、起きてしまったことは仕方ない。

せめてなるべく早く片付く要件であることを願いながら、アランは学園の制服に着替えた。

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