第八十七話 ギフトボックス
「罠が二つもかかってる訳だわ。まさかこんな低ランクの迷宮で、ギフトボックスが出てくるなんてね。まあ、多分、ハルトのスキルのお陰だと思うけど」
そうなのか? ギフトボックスってそんなにレアなのか? 前のパーティーではたまに出てたから、普通のものだと思ってたのに。ギフトボックスとは、中に何が入ってるか分からないゴージャスな箱だ。正直、宝箱の中に宝箱が入ってるようで、二度手間で訳が分からない。
「うわ、私、ギフトボックスって初めて見るわ。開けていい?」
アイがモモのギフトボックスを取ろうとするが、モモは頭上に掲げて浮き上がる。
「まってくださいよ。その前にエリ、鑑定してくださいよ」
「はーい、詳細鑑定。えっ、『ギフトボックス魔法装備スペシャル』? 魔法がかかった欲しい装備を確定で手に入れられる? 何これ、大当たりじゃない!」
え、ギフトボックスに当たりやはずれがあるのか? いつもメンバーがすぐに開けてたから詳しく知らない。
「ギフトボックスに種類があるの?」
「それは私が説明するわ」
アイが薄い胸を反らしている。さっきエリの際どい姿を見たばっかだから何も思わない。子供みたいだ。
「『ギフトボックス』って中に確実にお宝が入っている箱なんだけど、中身はランダムよ。開けた人のリアルラック次第では凄いものが手に入る事もあるわ。あと、ギフトボックスにも種類があって、鑑定で中身が限定されてるものもあるの。例えば有名なのは『ポーションスペシャル』とか『武器スペシャル』とかね。『魔法装備スペシャル』なんて聞いた事も無いわ。多分激レアね。そのまま売るだけですっごいお金になりそうだけど、あんたたちは開けるのよね。はずれ引いたらシャレになんないわ」
どうもアイはこのまま売りたいみたいだな。けど、僕には無理だ。売ってしまったら、中身が何か気になって夜も寝られないよ。
「当然開けるにきまってるじゃないの。モモ、箱持ってきて、あんたの運じゃ大したものは出て来ない気がするわ」
「そうですね。私は魅力全ぶりですから運はあんまり高く無いですからね」
さらりと自己賛美を交えながらモモは降りてきてエリに箱を渡す。それを見てアイが口を開く。
「けど、さっきの爆発でよく無事だったわね。まるでエリみたいに頑丈ね。ドラゴンが踏んでも壊れなさそうね」
「あんた、一体あたしを何だと思ってるのよ。ドラゴンに踏まれたら即死よ、即死」
「踏んだドラゴンの方が即死するのね。怖い怖い」
「あたしが死ぬに、決まってるじゃないの。知ってるでしょ、あたしはか弱いんだから。そもそもドラゴンに踏まれてどうやってドラゴン倒すのよ」
「多分、毒殺ね毒殺。エリって毒とか好きそうだし」
「何言ってるのよ。それ、あんたでしょ。それより、開けるわよ、箱。やっぱりうちで一番リアルラックが高いのは」
「えっ、僕?」
みんなの目が僕に注がれる。うわ、エリが僕をガン見してる。怖いし、なんかさっきの下着姿をまた思い出してドキドキする。
何言ってるんだろう。スライム島に取り残されて脱出出来なかった僕が一番不運に決まってるじゃないか。