第八十五話 漢解除(エリ視点)
『漢解除』
罠を、HPや防御力または耐性頼みで解除する事。弱いと死ぬ事あり。
なんで漢解除って言うかは、多分漢らしい解除だからだろう。なんか蛮勇とかを漢らしいって昔は言ってたらしいからその流れだろう。なんか語調からムキムキのふんどし一丁の男性が罠を力尽くで解除するようなイメージが一瞬頭に浮かぶ。やだやだ。
当然、漢解除は初心者冒険者の教本とかでは厳しく禁止されてる行為だ。中身が何か分からない宝箱を開けるために命をかけるなんて馬鹿げている。けど、グレードの低い宝箱にえげつない罠がかかってる事は少なく実行する者は多い。それで毒矢にやられて大変な事になる事がよくあるそうだ。
ダンジョンの宝箱のグレードは、一般的な木から始まり、鉄製、銀製、金製、あとレインボーの光を放つミスリル銀製があると言われている。グレードが高くなるに従って中身は良くなり、激しい罠がかかってる可能性が高くなるという。
それで、この宝箱はと言うと、何故か鉄だ。こんな初心者用の迷宮でなんでこんなのがあるのかは謎だ。多分、ハルトのスキルによるものだろう。それと、隠し部屋の宝箱だからすこしサービスしてくれてるのかもしれない。余計だわ。多分、結構いい罠がかかってるはず。なんだろう。まあ、けど、あたしは腐ってもレベル20。大した事にはならないわ。
「ねぇ、いつまで宝箱とにらめっこしてんのよ。早く中身見たいんだけどー」
アイがいらついた声をかけてくる。呑気なもんだ。あたしの気持ちも知らないで。
「じゃ、あんたが開けてみる?」
「遠慮しとくわ。私は頭脳担当で罠は出来ないから」
「やっぱり、僕が開けよっか?」
ハルトは好意で言ってるけど、なんか煽られてる感がある。急いでいかないと、ハルトが宝箱に手を出しそうだ。
「いや、いいわよ。あたしが開けるから見てて」
「えっ、罠解除するんじゃないんですか? もしかして解除は解除でも漢解除?」
うっ、モモ、変なとこで鋭い。
「モモ、黙ってて」
あたしは宝箱を開ける。
ヒュン!
風切る音、目の前になんか飛んでくる。
カチン!
甘いわ。あたしはそれを歯で挟んで止める。うっ、苦い。毒矢だったのね。らくしよー、らくしょー。
どっごーん!!
えっ、二段階! げっ、宝箱、爆発しやがった。なにそれ。燃える燃える。髪、髪は女の命。あたしは目を瞑って頭を守る。
「大丈夫かっ! エリ!」
ハルトが叫ぶ。
「問題ないわ。ただの熱風よ」
良かった。耐久をごっそり上げてて。あたしは無傷。ハルトを安心させようと振り返る。
「エリ、エリ、服が燃えてる!」
ふぁさっと、服が落ちる。うわ、着てたのの前がごっそり焼け落ちてる。生き残ってるのは下着だけ。
「きゃっ」
咄嗟に隠す。よく考えると、なんであたしが解除したんだろう。ゴールドがいるじゃないの。
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