第七十五話 ゴーレム
すみません。激務後でさっきまで寝てました。
「まさか、海を漂流して生きてたとはな。だが、これでおさらばだ。このG13タイプのストーンゴーレム兵には手も足もでまい」
男の前には巨大なストーンゴーレム。その見た目は、まるで全身鎧を着た騎士だ。漂流って事はエリを狙ってるのか? 何でだ? 詳しくは聞かなかったが、エリってもしかして命を狙われてる?
「えっ、G13タイプ、ナイトマスターバージョン。実際に存在したのね」
なんかアイが驚いてる。そのG13って確か物語の伝説の殺し屋じゃなかったっけ?
「そのジーサーティーンて何よ」
エリが尋ねる。
「ジーはゴーレムの頭文字、サーティーンはグレード。古代ゴーレムの13ランク。12までは市場に出回ってるけど、13は噂だけしか聞いた事ないわ。魔道士の常識よ」
古代ゴーレム。聞いた事がある。ゴーレム召喚の魔石を使うと、一定時間言う事を聞くゴーレムを召喚できると。その価格は軽く百万ゴールドはする。
「それにしても、なんだ? その金色の天使とバナナの化け物は。まあ、どうでもいいか。行けゴーレム。あいつらをひき肉に変えろ」
狼イケオジが僕らの方を指差す。そしてゴーレムは駆け出す。デカくて岩なのに早い。
「ゴールドっ!」
エリの声で立ち上がったゴールドがゴーレムの腰にしがみつき突進を受け止める。ゴーレムデカいな。ゴールドより頭三つ以上は上背がある。
「なんだ? そいつは死んでなかったのか?」
狼イケオジが驚いてる。それにしてもよく喋る人だな。なんかあったら喋らずにいられないタイプの人なんだろう。プロの暗殺者かと思ったけど、違うように感じる。暗殺者って無口ってイメージがある。ベラベラ喋る暗殺者って、なんか極秘事項とかを漏らしそうだもんな。
「あたしのゴールドはそれしきじゃやられないわ」
まあ、僕もゴールドは大丈夫だと思ってたけど、普通は頭になんかブッ刺さったら死んだと思うよね。
けど、さすがゴーレムだ。ゴールドが押されジリジリと下がる。
「こいつ、強いわ。ハルトなんとかして」
エリが僕に振ってくる。
「えー、何で無理無理、ゴールドより力あるゴーレムだよ。逃げよう」
キンキンッ!
ゴールドの羽根が伸びてゴーレムを叩くが軽く表面がこさげるだけだ。
「逃げても無駄だ。G13はゴーレムの弱点、鈍重さを克服した機体だ。ゴーレムなのに馬よりも早く走れる。しかも疲れ知らずだ」
本当に良く喋るおっさんだ。けど、何か変だ。激ツヨそうなゴーレムに腰が引けてるのは僕だけだ。エリは全く怯えてないし、モモは羽根をピコピコさせなながら嬉しそうにゴーレムを見てる。アイなんかよそ見してバナーヌとなんか喋ってる。なんでそんなに緊張感ないんだ? 正常性バイアスってやつか? 何があっても自分だけは無事だっていう幻想。冒険では人が死ぬ。不条理に突然に命が失われる。みんな駆け出しだからそういう経験をしてないからだろう。アイなんて最近パーティーがゴブリンに壊滅されたばかりなのに。
だから、やらないと。僕がみんなを守らないと。
「みんな逃げろ。僕が命をかけてでも時間を稼ぐ!」
怖い。怖いけどやるしかない!
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