第七十四話 追跡者
「あんたたち止めなさいよ。なんか変な奴がつけてきてるってハルトが言ってるのよ!」
モモとアイに負けないような大声でエリが叫ぶ。ああ、これで追跡者を奇襲するという僕の作戦は難しくなったな。さすがにまる聞こえだろう。
「えっ、もしかしてストーカーですか? 私の」
まじでモモは自意識過剰だな。どうやったらあそこまで自己肯定感が高くなるんだろうか? 確かに初めて会った時にはモモの見た目には圧倒されたけど、中身を知った今、残念な生き物にしか見えない。
「そんな訳ないでしょ。確かにあんたは目立つけど、悪目立ちよ、悪目立ち」
アイがツッコむ。僕もそう思う。
「それって僻みですか? 悪目立ちでも目立ってる事には変わりないですよね。全く目立たない人には言われたくないでーす」
「わ、私だって学校では目立ってたわよ。頭が良くて可愛いってクラスじゃ有名だったのよ。裏庭で告られた事も二回あるわ」
どうなんだろう? 二回って多いのか? 普通なんじゃないんだろうか? そういう経験が無い僕にはわかんない。昔、勇気を出してイリスに告白したのを思い出す。オッケーで死ぬ程嬉しかったのに、あれも嘘だったんだな。
「へー、そうなんですね。私は村で告られたのは十回以上あったんじゃないですかねー。多過ぎて忘れたです。特に近くに住んでたゴン爺さんには、ほぼ会うたびにべっぴんさんって言われて、結婚しようとか、孫の嫁になってくれって、そりゃもううるさかったですから」
「モモ、あんたそれは社交辞令が進化したやつよ。だいたい近所の爺さんは若い女の子にはそう言うものよ。それをカウントしたら私でも軽く十回以上は告られてるわよ。特に私は子供の頃から可愛いかったから、親戚中で大人気だったのよ」
なんか、何自慢なんだか分からない。幼い女の子って可愛いから、ついつい甘やかされちゃうんだろう。それを真に受けて育って、この二人は自分可愛いと思いすぎる系女子になったんだろうな。
おっと、そんな事考えてる場合じゃないな。
「来るぞ!」
僕は声を張る。
「ゴールド!」
エリの声で、通路の来た方にゴールドが飛び出す。
キィーン!
ゴールドから金属が擦れるような音がしたと思ったら後ろに倒れる。その頭にはナイフの柄みたいなものが突き出ている。
「失敗したか。一撃で仕留める予定だったんだがな」
僕らをコッソリつけて来たおっさんだ。気付かれて無いって思って遠くから壁に貼り付いて忍び足でやって来る姿は滑稽だった。背が高く、髪は整髪料で後ろに撫でつけている。皮の鎧に腰には剣を下げている。面長でつり目気味で高い鼻。狼、狼みたいなギリギリ、イケオジって感じだ。
「ま、どっちにしても、全員死んでもらうがな」
そう言うと、狼イケオジはポケットから何かを出して床に投げる。投げた所の岩が盛り上がって、ずんぐりむっくりとした人型になる。まずい、もしかしてストーンゴーレムか?
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