第七話 狩猟 (ハルト→エリ視点)
「次は君の話を聞かせてくれないかい」
僕はエリさんに、ゆっくりと話しかける。久しぶりに言葉を出すと、思ったように舌が回らない。特に、『さ、し、す、せ、そ』が僕を困らせる。
「あたしは、船が沈んだの。なんとか救命艇で生き延びたけど、みんなは……」
うーん、エリさん、さっきまで元気にフルーツを食べてたのに表情が暗くなった。そりゃそうだな。船が沈んだんだから。当然、友達とかも乗ってたに違いない。しばらくはこの話はこれ以上聞かない方がいいだろう。しばらくは1人にしてあげた方がいいのかもしれない。
「じゃ、ボクはカリに行ってくるから、ゆっくりしててョ」
んー、『や、ゆ、よ』も上手く言えないな。朝、海に叫ぶ以外は話してなかったもんな。もしかしたらエリさんには僕は変な人に見えてるかもしれないな。
「狩りって何を狩るの?」
「シュライムやシャカナだョ」
いかん、気を抜いたら『さ行』が化ける。
「スライム倒すの見てみたい」
エリさんがキラキラした目で僕を見る。さっきは暗くなってたのに。良かった、悲しい気分から、少しは気を紛らわせる事が出来たみたいだ。
それにしても、やばい。めっちゃ可愛い。その可愛い女の子がココナッツのブラジャーを装備して僕を見ている。無理だ。目を逸らしてしまう。まさか僕が遊びで作って何度か装着したアレを使う日がくるとは。
「どうしたの? 早く行きましょ。スライムがフルーツ落とすの見たいわ」
そっか、フルーツがドロップするのを見たいのか。それにしても、女の子ってフルーツ大好きなんだな。さっきは必死に食べてたし。まあ、フルーツのお陰で仲良くなれたような気もするから蓄えてて良かった。
僕はエリさんを特別な狩り場へと案内する。
(エリ視点)
「ここだョ。見てて」
ハルトはあたしを家とはまた別の洞窟へと連れて行った。奥へ奥へと進み大きな部屋へと出た。その部屋の中央にあった魔法陣をハルトが踏む。すると、辺りの床に魔法陣が浮かび上がり、それから色とりどりのスライムが湧き出して来た。
「モンスターハウスの罠!」
あたしはつい叫ぶ。モンスターハウスの罠というのは、魔法を使った罠で、踏むと沢山の魔物を召喚するという危険極まりない罠だ。
あたし達を囲んでいるスライムは100を越えるだろう。いくらあたしがレベル20でも四方八方からスライムに襲われたら無事じゃ済まない。なのにハルトは平然としてる。
「何やってるのよ、あんた!」
つい声を荒げてしまう。
「大丈夫だョ。じゃ、始めるョ」
「えっ?」
プチプチプチプチプチプチプチプチ。
ハルトがあたしを中心に螺旋を描くように走り始める。その後には潰れたスライム。踏み潰している。いや、ただ走っている。まるでスライムなんか居ないかのように。
「んー、1個だけだったよ。食べる?」
「…………」
ハルトの手には『力のリンゴ』。つい受け取る。ハルトは一瞬にして100匹を越えるスライムを踏み潰し、それからドロップしたフルーツを拾って来た。
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