第六十八話 賢さのバナナ
すみません。また、もうストック無いです。気がついたら、中々な時間書いてて遅くなりました(>_<)
「待って、食べないで!」
エリが大声を出す。
「なんでよ。バナナは食べるものでしょ。私のバナーヌも言ってたじゃない」
アイがバナナを剝こうとする。
「それは、それは、あたしもバナナを食べたいからに決まってるじゃない」
うん、エリ、フルーツ大好きだもんな。けど、昨日、死ぬ程食べたよね。みんなどんだけバナナが好きなんだ? 少なくとも僕は全く食べたくない。なんか見るのも少しやだ。
アイの目がキラリと光る。
「そうなのね。このバナナには特殊効果があるのね。食べるの待ってあげるから言いなさいよ」
エリがチラリと僕を見る。なんなんだ?
「それは、大っぴらに言えない事だから……」
エリはアイに近づき耳打ちする。いつの間にそんなに仲良くなったんだ?
「僕らしか居ないのに、僕には聞かせられない話なのかなー」
「それは、多分、言いにくい話なんじゃないですか? バナナって食物繊維が豊富ですから、便通が良くなる的な」
僕の独り言にモモが答える。
「まあ、そうだね。女の子だから、そういう話を大声ではしたくないのかもね。で、モモも少しはそういう恥じらい持ったがいいんじゃない?」
「恥じらい? そんなものは必要ありませんね。私は天使ですから、私の口から出たらどんな言葉も綺麗なものになります。恥じらう必要なんかありません」
なんか訳分からない凄い自信だな。
「分かったわ。そうなのね。じゃ、これ売りましょうよ」
アイがバナナをじっと見つめている。バナナ一本売っても100ゴールドにもならないんじゃないのか? けど、ドロップしたバナナは長持ちするからもう少し高く売れるのかもね。
「売りたいとこだけど、間違いなく足がつくわ」
「そうよね。で、誰が食べるの?」
「公平にジャンケンしましょう」
モモが二人に割って入る。モモもバナナをまだ食べたいのか?
「そうね。恨みっこなしよ。ジャンケンポン」
エリの掛け声で、モモはグー、あとの二人はチョキだ。
「シャーッ! 『賢さのバナナ』ゲット!」
モモはアイからバナナを奪うと掲げる。めっちゃ嬉しそうだ。
「モモッ!」
エリがモモを叱責する。なんで? そのバナナの名前、『賢さのバナナ』って言うのか。もしかして、なんか他に特殊効果があったりするのか? 知力が上がるとか。そんな訳ないか、そんな物をスライムがポコポコ落とす訳ないし。
「まあ、一番、それが必要な人のものになったようね」
アイがそっぽ向いて言う。多分、バナナ好きとして人が大好きなバナナを食べるのを直視出来ないんだろう。バナナが必要ってモモは便秘なのか?
「すみません。嬉しさでつい。アイ、なんか私が一番、賢く無いみたいじゃないですか! じゃ、気を取り直していただきますっ!」
モモはめっちゃ幸せそうな顔でバナナを剝き始める。バナナが手の中になければどんな人でも惚れてしまいそうな表情だ。人ってこんな幸せそうな顔が出来るんだ。ただバナナを食べるってだけで。
「わっ!」
アイがモモの背中を軽く押す。
「ひっ!」
モモはピンと背筋が伸び、その手からバナナが落ちる。
「何するんですか! 私は敏感なんですよ! あ、バナナが、バナナが……」
モモが落ちたバナナのそばに崩れ落ちる。転がったバナナにはたっぷり土がついている。モモ、めっちゃ悲しそうだ。まるで、神殿に掛けて聖人とかの死を悼んでいる天使の宗教画みたいだ。悼まれてるのはバナナだけど。人ってこんなに悲しそうな顔が出来るんだな。
「ごめん、まさか落とすなんて」
珍しくアイが素直に謝っている。まあ、モモの顔見たらそうなるよね。
「大丈夫です。天使ですから」
モモは血走った目で、落ちたバナナを拾って口にする。まじか、微塵の躊躇いも見えなかった。もしかして、僕らの中で一番バナナを愛してたのはモモなのか? なんかジョリジョリ音がする。
「ねぇ砂くらいとったら?」
なんかモモは鬼気迫る表情してるけど、僕はつい口にする。
「砂くらいどうって事ないわ。天使だから。砂落として実が減ったら勿体ないじゃない」
食べ物を大事にするのは悪い事じゃない。けど、なんか違う気がする。
「ふー。賢くなった気がするわ。皮も勿体ないわね」
天使はモキュモキュとバナナの皮を食べている。そう言えば、エリがフルーツを食べた後、種とか皮とか見た覚えがないな。もしかして……
なんか賢さののバナナとか言ってたけど、これは本当は食べると賢く無くなるバナナなんじゃ無いだろうか?
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。