第六十七話 初戦
「なんか違和感が凄いね」
僕らの前にはピンク色のスライムが3匹。石造りの迷宮にケバケバしいピンク色のスライムは不自然極まりない。迷宮に入り通路、部屋、通路、部屋と進んで初めての魔物だ。
「じゃ、ハルト倒して」
エリが僕の後ろに下がる。
「えっ、エリたちが倒したいんじゃないの?」
「まあ、そうなんだけど、多分ハルトのスキルのレアドロップ率アップはパーティーにも効果はあるけど、ハルト本人が倒した方が確率が上がるんじゃないかって思うのよ」
「そうですね。そうじゃ無かったらハルトの前のパーティーはめっちゃレアアイテム持ってたはずだから、絶対にハルトを追放してないですもんね」
モモはそう言うと後ろに下がる。けど、スライムのレアドロップだと思うのはフルーツ。大した事ない。あ、そうかエリはフルーツ食べたいのか。本当に僕が倒すとドロップ率が更に上がるのかは分かんないけど、その可能性があるならやってみるか。エリが喜ぶ顔を見たいし。
ん、けど、確かピンクが落とすのはバナナ。昨日あれ程食べたのにまだバナナを食べたいのか。もしかして、アイよりエリの方がバナナを好きなんじゃ? ま、やるか。
ブチュ、ブチュ、ブチュ。
取りあえずスライム3匹を踏み潰す。コツがあって、上から綺麗に潰さないと滑ってこける事がある。
「うわ、なにそれ。やばっ」
振り返るとアイがドン引きしてる。
「えっ、スライムなんて最弱だから誰でも出来るでしょ?」
「あんた、何言ってるのよ。スライムだって魔物。走ってる牛とか馬に踏まれてもスライムはそんなにならないわ」
「えっ? そうなの?」
「アイはここに来たばっかりだから知らないのよ。あたしも出来るし、モモだって出来るわよね」
エリがモモの肩を叩いている。やっぱそうだよな。ちょっとした冒険者なら誰でも出来る事だよな。
「エリ、何言ってるんですか? あんな化け物じみた事できる……」
「出来るわよねー」
なんかエリがモモの肩を握ってる。モモの顔が引きつってるような?
「ちょっとー。そのすぐに暴力に訴えるの止めましょうよ。私はか弱い天使なんですから。わかりました。やってみますよ。やればいいんでしょ」
僕に襲い掛かかかってきたモモがか弱いのかは別として、次はモモがスライムを踏むみたいだ。
「っわ。見つけたわ!」
アイが今まで見た事無いくらいすばしっこく動いて、スライムのそばから何か拾い上げる。そして掲げる。
「バナナ! ゲェーーーーット!」
おっ、今日はついてるな。いつもは百匹で1個落ちるかどうかのフルーツがもう落ちた。
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