第六十六話 入口
ギルドでお金を払って、迷宮の入口がある建物の鍵を借りる。これは終わったら返さないといけない。迷宮は街道沿いにあり、なんと料金には乗り合い馬車の人数分のチケットもついていた。まさに至れり尽くせり。馬車に乗って目的地へと向かう。荷物は僕が背負っていて五日は迷宮に籠もれる内容的だとエリが言っていた。どこで売ってたんだろうと思える程のでかいリュックで、エリが運ぶってしつこく言ってたけど、僕のが無理矢理取り上げた。さすがに女の子に自分の倍くらいもある荷物は運ばせられないよ。ちなみに、モモは羽根が邪魔でリュックは背負えなく、アイは非力故に持ち上げる事も出来なかった。それを軽々背負っていたエリは力持ちだな。
迷宮の入口は木で出来た鍵がついた小屋の中にあり、地面にぽっかりと穴が開いていた。中には緩やかな石造りの階段が続いている。しかも僕らが近づくと、奥に向かって音も無く壁のかがり火が点いていく。どういう仕組みなんだろう。松明がいらないから便利だ。まあ、僕は島に住んでたから、暗くても音や臭いで辺りのだいたいの状況は分かるんだけど、さすがに女の子たちには明かりがいるからね。
僕は奥に何も居ない事を察知し、階段を下ろうとする。
「ハルトには荷物持ってて貰ってるから、あたしが先に行くわ」
「いや、危険かもしれない。僕が先に行くよ」
「大丈夫よ、だって地下一層はスライムしか出ないんでしょ?」
「エリ、スライムと言えば、私でしょ? 私が行くわー」
僕たちの上を飛び越えてモモが階段に飛び込む。なんで、二人は何で先頭を奪い合ってるんだろう。誰でもいいよね。けど、なんでスライムと言えばモモなんだ? 自虐ネタか?
そして、モモ、エリ、僕、アイの順番で階段を降りていく。
「スライマー♪ スライミー♪ スライムー♪ スライメッメ♪」
天使が天使の歌声で、いみふなスライムソングを歌っている。僕らのパーティーでの初めての迷宮。その緊張をほぐしてくれてるのかもしれないが、普通の迷宮では歌うはNGだろう。
「ねぇ、ハルト。ハルトはなんで冒険者してるの?」
アイが後ろから尋ねてくる。
「別に理由は無いよ。冒険者になるしか無かったからだよ。僕には出来る事は少ないからね」
「ふーん。そうなのねー」
「それで、アイはどうしてなの?」
「どうしてって、別にどうだっていいでしょ」
自分から聞いてきたのに、自分は答えないのかよ。少しイラッとする。まあ、けど、アイとは出会って間もないから、あんまり自分の事は話したくないんだろう。信頼は今から築いていけばいいだろう。アイの魔法は凄いから僕らのパーティーよりもっといいのに移籍するかもしれない。そうならないように頑張らないとね。