第六十五話 迷宮
「ハルト、今日から迷宮に潜るわよ」
エリが僕の前にパンフレットを出す。僕らは今、4人で宿の食堂で軽く朝食を取ったとこだ。ちょっと遅いけど、冒険者ギルドにこの後向かって仕事予定。
『初心者用迷宮カサンドラ。石造りの部屋と通路で構成されるマッピングしやすい造り。Sサイズ。ワンダリングモンスター無し。ワンフロアに1個宝箱と泉あり。全3フロア。最終ボスはオークナイト。フロアはランダム生成。御利用は1パーティー6人まで。費用5万ゴールド』
挿絵が入ったパンフレットの文字だけ拾っていく。これは完全に国が管理してる迷宮のやつだ。費用を払うと迷宮を利用できる。3フロアで、細かく読むと出てくるモンスターは、スライムとゴブリンとオークだ。頭の中で計算してみる。Sサイズっていうのはフロアの広さのだいたいの目安だ。ざっくり考えて、出てくる魔物は10体くらいと考える。スライムはお金にならない。ゴブリンは討伐依頼じゃないから倒してもお金にならないし、武具とか剥ぎ取っても一体あたりいいとこ300ゴールドくらいだろう。オークは肉は売れるけど、迷宮から持って帰れるのは三体くらいが限界だろう。一体3千ゴールドとして、9千ゴールド。宝箱ありと言っても、良くて入ってるのはポーションくらいだろう。どう考えても全部合わせても、支払う5万ゴールドは稼げなさそうだ。
「エリ、それは多分赤字になる。これって金持ちがレベルアップする用の迷宮なんじゃないの?」
「そうよ。けど、ハルトにはレアドロップ率アップがあるわ。オカリナみたいなものが落ちたら1個で元取れるわ」
「あ、そう言う事ね。宝箱が確定3個なら期待出来るわね」
アイがニヤニヤしてる。最終的にオカリナはパーティー財産にはなったけど、アイが保管してる。オカリナは僕のレアドロップ率アップで初めて出た魔道具。今まで無かったんだから期待しないで欲しいな。
「宝箱、ワクワクしますねー。それ、全部私が開けていいんですか? 多分この中では私が一番運がいいですから」
モモが羽根を小刻みにパタパタしてる。まあ、天使スキル持ってる時点で幸運だもんな。
「何言ってるのよ。ハルトが開けるに決まってるじゃない」
エリが突っ込む。
「いやー。それは勘弁して欲しいな。だってほぼ宝箱の中身次第で稼ぎが変わるって事でしょ? なんかギャンブルみたいだし、僕はリアルラックは低いからね。5万は高いよ。それより薬草採ったり、軽い討伐依頼の方が稼げるよ」
僕は運が絡むような事をすれば基本的に下振れする。まあ、薬草狩りとかは単純作業だからエリたちは退屈なのかもしれない。
「ハルト、宝箱とかレアドロップとかより、あたしたちは経験を積みたいの。お金払ってでも比較的安全な迷宮で、お互いの実力を確認したいし、連携の練習もしたいの。今あるパーティー資金はほぼハルトが稼いだものだから、ハルトにどうするか決めて欲しいの」
「じゃ、迷宮へ行こう!」
エリがそこまで言うのなら、行くしかないよ。
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