第六十三話 ガールズトーク (エリ視点)
「ハルトは部屋に戻ったわ。二つ部屋を挟んでるからもう聞こえないわ。まずは、アイ、あたしたちの事を説明するわ」
あたしはアイにハルトの事と自分の事を説明する。
「えっ、それ本当ですか? エリー王女」
アイ、王族と知った途端の手のひら返し。したたかだわ。
「王女って言うのは秘密にしてて、あと態度も今まで通りでお願い。あたしは今はただの冒険者のエリだから」
「分かったわ。エリ、で、ハルトってそんなに強いの?」
「アイも見たでしょ。だからさっきのハルトの精霊も化け物よ。それに軽く喧嘩売った人もいるけど」
「それなら先に教えといてくださいよ。精霊のステータスが呼んだ人の半分になるって。あやうく私、処分されかけたじゃないですか!」
「ハルトが一緒に居たから言う暇が無かったのよ。まだしばらくはハルトには自分の力を勘違いしてて欲しいから。という訳でアイ、あなたも仲間になったんだからよろしくね」
「まあ、いいけどさ。けど、ハルトが自分の力に気づくのって時間の問題じゃない? 今日ゴブリンを滅殺してたでしょ」
アイが言う通りだ。今日も本来ならあたしたちがゴブリンの巣に突撃してハルトを戦わせるべきでは無かった。今日だけでハルトのレベルは4に上がってた。けど、ゴブリンの巣は汚かったから悩ましいとこだ。けど、オカリナを使えばなんとかなりそうだ。
「そうね。だから今後は出来るだけあたしたちが戦ってハルトは戦わせない。それであたしたちのレベルを上げていく」
「エリ、この前もそう行ってませんでした?」
「あなただって、羽根が汚れるのは嫌とか言ってたでしょ」
「まあまあ、そのおかげで私が居たパーティーは生存出来たから良かったわ。けどさ、ヤバいよあれ、ハルトのヒール。多分アレクとメリー、あ、戦士と神官ね。あの二人は死んでた。けど、ハルトのヒールで生き返ったわ」
「なにそれ、詳しく教えて」
アイに詳しく話を聞く。それはまずいわ。多分ハルトのヒールは死んで間もない者を生き返らせるくらいの威力がある。ヒールも隠れて使わせるようにしないと。正直頭が痛い。
けど、あたしには嬉しい誤算があった。ハルトの精霊の姿だ。精霊はみんな大好きなものの形をとっていた。ハルトはあたしの事を大好きなのかも知れない。思い出すと自然と顔が緩む。
「どうしたんですか? いきなり変な顔して?」
モモ、失礼ね。
「あ、分かった。ハルトの事考えてたんでしょ。エリってムッツリなのね」
アイ、鋭い、なんでばれた?
「べ、別にそんな事考えて無いわよ。ムッツリって何よ。叩くわよ」
「うわ、顔赤い。確かに私もびっくりしたわ。バケツの中が可愛らしかったから。けど実際ハルトって誰が好きなんだろ。ほらほら男の子って好きな女の子をチラチラ見るじゃない。けど、ハルトってそれが無いのよねー」
確かにそうだ。一緒に暮らしてた時も全く手を出す素振りも見せなかった。あたしに魅力が無いんだろうか?
「けど、オカリナの事で真っ赤になってたから、女の子が好きじゃないって訳じゃないと思うわ。学校で隅っこに居るような陰キャみたいだから、多分全く女の子への免疫が無いのよ。それに自分に自信が無いんだと思うわ」
アイの言葉がチクリと胸に刺さる。そう、ハルトは自信が無い。強いのにその自覚が無いから。それを教えたら変わると思うけど、それをしたらハルトは遠くに行っちゃうかもしれない。あたしは悪い女だ。自分の保身のためにハルトを犠牲にしてる。
「けど、そこがハルトのいいとこですよ。冒険者ってオラついてるやつが多いじゃないですか」
モモが言う通り。
「そうそう、その守ってあげたくなるとこがいいのよ」
あたしはハルトのそんなとこが気に入ってる。あたしたちは、夜遅くまで、ハルトの事で盛り上がった。
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