第六十二話 本物
「お呼びいただきありがとうございます。私はハルト様の強い思いにより生み出された者。エリツーです」
七色の光が集まり弾け散り、そこに現れたのはエリそっくり、いや、エリそのものだった。しかも恭しく頭を下げている。
僕らの時が止まる。どうしよう。どう見比べても本人だ。シャッフルしたらどっちがどっちか判らない。
「……本物」
アイが沈黙を破りボソリと呟く。本物のエリがハッとして口を開く。
「それは本物じゃないわ。確かに強いけど、あたしが本物よ」
「ハルトってそんなにエリが好きなんですか?」
モモがやれやれしてる。
「ちょっと待ってよ。だって僕の前にエリがオカリナ吹いたじゃん。だから、なんて言うか頭の中がエリの事でいっぱいになっちゃったんだよ」
「えっ、じゃ、私がハルトの前に吹いたら私が発生するって事?」
モモの疑問にエリツーが即答える。
「それは違う。鳥女。ハルト様の精霊はこの姿で固定された。次もこの姿だ」
なんて言うか、この気位が高そうな所も本人そっくりだ。
「鳥じゃなくて天使です! エリ、このエリツー、軽くしばいてもいいですか?」
言いながらもうモモはエリツーに殴りかかってる。モモ、もしかしてエリになんか不満でもあるのか?
「やめなさいっ!」
エリの言葉は遅い。けど、モモのパンチはエリツーに止められる。指先一つで。
「えっ、なんですかこれ。私の力はかなり強いのに」
モモが驚く。
「ハルトの半分のステータスよ。私の4倍の力があるわ」
エリの言葉に、僕は計算する。エリの力が10くらいとして、4倍で40、エリツーってそんなに力があるのか? その倍は80、僕はそんなに力があるはず無いから、まあ、大袈裟に言ったんだろう。
「ハルト様、どうしましょう? 処分しますか?」
エリツーが無機質な声で聞いてくる。
「エリツー、大人しくして。モモは君の力を見たかっただけだよ。それで君は何が出来るのか? あと、ハルト様は止めてくれ。ハルトでいいよ」
「ハルト様、いや、ハルト。私が出来るのは戦闘全般と、レアドロップ率アップです。効果はハルトの半分です」
まじか。やっぱり大した事ないな。けど神官のモモより強い戦士だと考えるといい戦力になりそうだ。
「じゃ、機会があったらまたよろしく。送還」
「はい、では、またお呼び頂けるのを楽しみにしております」
エリツーは微笑むと、パッと光って消えた。
「ごめん、大して役に立たなさそうな精霊で」
「いや、全然問題ないわよ。モモのと違って賢そうだったし。とっても役に立ちそうよ」
エリは微笑んでるけど、やはり少しぎこちない。社交辞令だろう。
「じゃ、今日は解散。けど、寝る前にガールズトークしましょ」
僕だけ部屋から押し出される。ガールズってやっぱりコイバナとかするんだろうか?