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 第六十話 ゴールド


「じゃ、次はあたしね」


 エリはそう言うとアイからオカリナを受け取り口に当てる。目を瞑りオカリナを口にするエリはそれだけで絵になる。


「ピー。ピーヒャラリララー♪」


 流れるような旋律。さすがエリだ。楽器も弾けるのか。まさに完璧超人。


「うわ、これきっついわね。かなりMPもってかれたわよ」


 金色の光の粒が舞う。アイもモモも微妙な精霊だったけど、エリのは凄いんじゃないか? 金色だし。

 そして金色の粒子が集まり床の一点に向かって落ちていく。床に現れたのは金色のコイン?


「金貨ですねー」


 モモが拾う。


「金貨の精霊? これって偽造金貨ですよね」


 アイがモモの手のひらの上の金貨を覗き込む。


「エリって本当にお金が大好きなんですね。呼び出した精霊が金貨なんて」


 モモがいたずらっぽい目でエリを見る。役立たず精霊仲間だと思ってるんだろう。


「そうよ。お金は大好きよ。お金があれば大抵の事は出来るでしょ。あたしの精霊はあんたたちのと違って使い終わったら金貨と同じ重さの金が残るからお金として使えるのよ!」


 まじか。それってかなり有用だよね。金貨、小金貨分のお金が生まれる。それって文字通り錬金術だよね。やっぱエリは凄い。これって、毎日エリはオカリナを吹くだけで小金貨四枚、四万ゴールドの稼ぎ、一ヶ月で120万、1年で約1400万。問答無用のお金持ちだ。


「それだけじゃなくて、好きな形にする事も出来るし、あたしの半分のステータスを誇るのよ」


 エリがドヤる。エリの半分のステータスって事は多分子供くらいの力はあるんじゃないかな。


「じゃあ、エリ、猫、猫ちゃんにそれしてみてよ」


「お茶の子さいさいよ」


 エリはモモが持ってるコインを取ると、床に置く。なんかエリってよくお婆ちゃんみたいな言葉を使うよな。聞いた事はあるが、使ってるのは初めて聞く言葉だ。


「猫ちゃんになーれー」


 おおっ、コインが膨れ上がったと思ったら四足歩行の猫くらいの動物になっていく。出来損ないの幼児が書いた動物のような形になって、形になって?


「ねぇ、それで完成?」


 アイが問いかける。


「ほら、猫ちゃん?」


 エリが小首をかしげる。金色の妖怪みたいなモノを指差して。


「ププッ」


 モモが噴き出している。アイも指差して笑い始める。


「キャハハハハッ。何よソレ。あんた、全国の猫ちゃんに謝りなさいよ。ソレを猫って言うのなら、世界中の猫が怒るわよ」


 エリがしょげる。珍しいな。これはフォローしとかないと。


「ほらほら、よく見なよ。足だって四本あるし、長さはちぐはぐだけど。耳だって、あ、耳無いね。尻尾だって生えてるから、僕は猫だと思うよ」


「ハルト、フォローになってないわよ。とどめになってるわよ。ハハハッ」


 アイは猫? を見て腹を抱えて笑ってる。モモも「クックックッ」って俯いて笑いを堪えている。


 僕はエリがここまで落ち込むのを初めて見た。人間誰しも得手不得手があるもんだな。

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