第五十八話 ルーレット
「ふーっ。腹パイ!」
モモがベッドに足を投げ出して座ってお腹をぽんぽんしてる。明らかに膨れている。けど、『腹パイ』って腹いっぱいの略だとは思うけど、モモが言ったら、その上のメロンメロンに目がいってしまう。
「あんた、はしたないわよ。あと、その言葉禁止。『腹ぱん』って言いなさい」
僕の隣に座ってるエリからNGが出る。
「えーっ、なんでですかー。『腹パイ』って響きが可愛いじゃないですか?」
「あんたがそう言うと、その無駄にデカいブツに目がいくのよ!」
「えっ、もしかしてエリ、自分が小さいからって嫉妬してるんですかぁー?」
「あたしが小っちゃいんじゃないわよ。あんたがデカすぎるのよ。ねーアイ」
「エリ、私を何巻き込んでんのよ。喧嘩売ってるの? いつでも買うわよ。ちっ、バナーヌ呼びたいとこだけど、MPが足りないわね」
確かにアイは一番小っさい。けど、僕は女性の価値はそこで決まるとは思ってない。むしろ僕の目にはモモのそれは触手の一部くらいにしか見えない。
「じゃ、『腹ぱいぱん』でどうですか?」
「余計ダメっ!」
うん、エリが言う通りだ。部屋の中で良かった。この天使、危険すぎる。
「しょうがないですねー。では、貧しいものたちよ。特別に私が大きくする方法教えましょうか?」
厳粛ぶったモモの言葉にエリもアイもガバッと立ち上がって詰め寄る。
「では、これを毎日やってください。これで私は大きくなりました。絶対効果ありますよ」
モモは立ち上がり僕らの方を向くと翼を広げる。その神々しい姿はまさに天使。けど、みんな男の僕が居るのに胸の話で白熱してるなー。どういうリアクションすればいいのか難しい。
「モモちゃんルーレットスタート。ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」
なんと、モモの声に合わせて胸が交互に弾む弾む弾む。僕は目が離せなくなる。跳ねてる跳ねてる!
「やめーい!」
即座にエリがモモの頭をはたく。知らなかった。女の子って実は胸を自由に動かせるんだな。
「エリ、何するんですか? これを毎日入浴前に続けるだけでスリーサイズはアップしますよ」
「それなら、人が居ないとこでしなさいよ。下品極まりないわ。それにそれ以前にそんな感じに動かせんわ普通」
えっ、そうだったのか? モモが特殊なだけだったのか。
「あれを毎日すれば大きく……どうすれば動かせるの?」
アイが自分の胸に手を当ててる。
「アイ、止めなさい。多分モモが羽根を動かしてるのと同じ原理よ。あれはスキルよ」
「そうなのね。残念。そろそろ、本題に戻りましょ。じゃ、次はモモにオカリナ吹いて。私は愛してるバナナの精霊が出て来たけど、モモはどんなの出てくるかしら。多分スライムよ。スライム。肌色の」
アイがモモにオカリナを渡す。モモはそれを手にしてベッドに座る。肌色のスライムは召喚しなくてもそこに二匹居ると思ったけど言わない。これはセクハラだ。
「エリ、このオカリナ、回数制限は無いんですか?」
モモが問いかける。
「一日四回だけど、四時間おきに回復するわ。あと、精霊は1時間顕現するそうよ」
「なんかアイの唾液がついてそうで嫌すね」
オカリナの口をモモは服で拭う。
「何細かい事気にしてるのよ。私が汚いみたいじゃない」
「いえ、別にそういう積もりはないですけど、私、こう見えて結構すぐお腹こわすんですよ」
「ひど、私の唾液はばい菌って言うの?」
モモとアイの間に剣呑な空気が流れる。止めるべきか?
「はいはい、それくらいにして、モモ、吹いてみなさいよ」
エリがなだめて、モモがオカリナを口にする。
「ピッピップー♪」
うっ、やたら高くて耳障りな音がする。そして、白いキラキラとした光の粒が集まり始める。そして空からヒラヒラと光の羽根が落ちてくる。なんか初めてモモと会った時みたいだ。これは期待出来るんじゃないか? バナナの精霊より凄い存在が現れるのでは?
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。