第五十六話 バナーヌ (前)
遅くなりまして、申し訳ございません。昨日は朝四時まで働いてました(T_T)
ぬちゃっ。
なんか汚い音を立ててアイはバナーヌから離れる。両腕と黒いローブには白いバナナカスがついている。けど、その顔から笑顔が溢れ出している。なんかクールで小柄で可愛らしい女の子ってイメージだったのに……
バナーヌはパンチ食らった穴が空いていて、アイが抱き着いた形に凹んでいる。効くのかなー?
「ヒール!」
なんとなくヒールしてみる。みるみるバナナの実は元の形に戻ったのみならず、皮も重力に逆らって戻りくっついていく。
「旦那様、ありがとうございます」
右手を胸に当て、バナーヌは頭? を下げる。
「どういたしまして」
つい僕も頭を下げる。礼儀正しいバナナだな。
「まあ、見た目はアレだけど、性能はそこそこよ」
エリ、バナーヌを鑑定したのか?
「ご鑑定ありがとうございます。私自身の事ですので、私の口から語らせていただいてもよろしいでしょうか?」
バナーヌはアイの方に体を向ける。
「よろしいですよ」
アイが肯く。バナーヌの言葉遣いにつられてる。
「私はご主人様の半分くらいの力を持っております。簡単に言わせていただきますと、頭脳以外は猿以下です」
「ちょっと、バナーヌ。なんか私も頭脳以外は残念みたいじゃないの!」
アイが声を荒げる。
「そこはご主人様に成長していただけたら、私も強くなります。ですが、知恵こそがかけがえの無い力。人ではなく、バナナ側の目線の多角的な判断で皆様方のお役に立てると思います」
なんか頭良さそうな事言ってるように聞こえるけど、バナナ側の視線ってなんだよ。実はコイツ適当な事をもっとももらしく言ってるだけなのでは?
「ですが、先程も申した通り、私はバナナ。食していただけてこそ本望。なんと私を食すると、皆様方がおっしゃる所のMPが回復します」
「はいはいはいはい、バナーヌさんっ!」
モモが手を上げる。
「その、MP回復ってどれくらいの量食べたらどれくらい回復するのでしょうか?」
「鳥のお嬢様、それはですね。だいたい五百グラムで、1ポイント程回復します」
結構大量だな。けど、モモたち神官にとってはMPは命綱だからな。
「鳥じゃなくて、天使です。それで、バナーヌさんは栽培できないんですか?」
要はバナーヌはMP回復のマナポーションのようなものだ。マナポーションは高いから、バナーヌを増やせれば便利だ。
「その必要は無いでしょう。私は食べられると消滅しますが、その時は精霊界に帰るだけ。また召喚いただけたらお召し上がりいただけます」
モモの視線はバナーヌに釘付けだ。凄いなバナーヌ。アイもモモも虜にしてしまった。ハーレム系主人公みたいだ。
「あと、私の能力としましては、ご主人様の使える魔法を半分の回数、1回使う事が出来ます」
「ちょっとバナーヌ。何ばらしてんのよ。魔法を使える回数は魔道士のトップシークレットでしょ。みんなに2回しか使えないってばれちゃったじゃないの!」
「大丈夫、大丈夫です。2回も使えれば十分です。私もそれくらいですから」
え、アイもモモも2回しか使えないの? 僕は何回使えるか数えた事も無いのに。もしかして、僕って魔法使いの才能がある?
「ご主人様、パーティー間では魔法を使える回数は共有しとくべきです。あと種類も。私もマジックミサイルとマイトを使えます。ですが、私の場合は皮を剥かないと魔法は使えません。マイトも中身に触れていただかないと効果が出せません」
そう言うとバナーヌは先っちょだけ皮を剥く。
「何それ、じゃ、皮なんて無い方がいいんじゃない?」
アイが軽くバナーヌを非難する。
「ご主人様。皮は大切です。大事な中身を守ってるのですから。私の皮には一定量の魔法を吸収する効果と、物理攻撃を防ぐ力があります。皮は大切なんですよ。中身を剥き出したままにするなんてとんでもないです」
なんか品が無く聞こえない事も無いけど、その言葉はストンと胸に落ちた。皮って大事なんだな。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。