第五十三話 戦利品 2 (エリ視点)
ごりゅっ! びきっ!
あたしは目を瞑ったまま足を踏み抜く。
ん?! オカリナ柔っ。けど、何かが割れたような潰れたような感触。
「ぐぅええええええーーーーっ」
ん、オカリナが叫んでる。見るとアイが身を呈してオカリナを守っている。何やってるのよこの娘。あたしの足はその背中に刺さっている。ヤバ。全力でいってしまった。
「ま、守ったわ。ゴフッ」
アイは顔を上げて私を見ると満足そうに微笑んで血を吐いてうな垂れる。え? 何が起こってるの?
「エリ、何してんの? もしかして、いじめ!」
ゲッ。ハルトがこっち見てる。咄嗟に急いで足を引く。
「みーてました♪ みてましたー♪ ハルト見た? エリ、思いっきりアイちゃんの事踏んづけてましたよ。親の敵ばりに」
うわ、何言ってるの残念天使。アイが飛び込んで来たのよ。見てたでしょ。
「ちょっと、それどころじゃないでしょ。事故よ、事故。それより早く回復魔法を!」
「そだね。ヒール!」
ハルトが魔法をかける。え、なにそれ。アイが吐いた血がヌルヌルっと口の中に戻っていく。キモっ。これは間違いなくヒールじゃない。なんか変な進化してる。
「エリ酷いわ。私、間違いなくさっき肺が潰れたわ。あーあ、せっかく私だけ前のパーティーで無傷だったのに。あ、パーティーメンバーなんで、ヒールの代金は払わなくていいわよね」
アイがニッコニコしてる。なんかエリさんが、エリに呼び捨てになってるし。けど、ここでアイにとぼけられたら、あたしは女の子を足蹴にする鬼畜認定されるから何も言えない。さすがのハルトでもドン引きだろう。
「ちなみに私は、貴重な魔道具をエリが壊そうとするから守っただけよ」
アイは立ち上がってオカリナを見せびらかす。
「えっ、貴重な魔道具?」
「またエリが壊さないように、私が管理するわ。効果は帰ってからにしましょう」
そう言うと、アイはオカリナをローブのポケットにしまう。や、やられたわ。
それからあたしたちは、アイの元パーティーを荷物持ちにして帰る事にした。とは言ってもゴブリンが装備してた鎧や武器などの屑鉄はロープで結わえてハルトが引きずってるけど。
街に戻りギルドで換金したら依頼の報酬も含めて結構な稼ぎになった。ゴブリンキングが居た事で、色々報告があるそうだけど、それは明日にしてもらう。あたしとモモはほぼ何もしてないから、うちのパーティーに転がり込んで来たアイに全てをなすりつける。魔法使いは頭いいから、この手の仕事は全部してもらおう。まあ、その前に色々アイとは口裏を合わせないとね。ちなみにオカリナはアイがパクったままだ。後で取り返さないと。
アイたちに多めに報酬を渡して宿に戻る事にする。最後に言いたい事があるそうで、ギルドの前の道でリーダーだったと思われる戦士アレクから話し始める。
「あなた達のおかげで命拾いした。本当にありがとう。俺はもっと鍛えて、ハルトさんくらいに強くなったら冒険者に復帰する。その時はよろしく」
ハルトくらいに強くなったら? それって冒険者永遠に止めるって事だろうか?
「それなら、すぐまたギルドで会えるね。僕なんか大した事無いから。レベル2だからね。ほんの少し、島で鍛えて強くなっただけだから」
ハルトとアレクは握手してる。アレクの顔が引き攣ってる。アレクの手が潰れないかドキドキする。今日はこのあとハルトに握手の練習させよう。いつか犠牲者が出る。
「本当にありがとうございました。私は神殿に居ますので、ご縁がありましたらまたお会いしましょう」
神官娘が頭を下げる。
「ありがとうございました。私は武者修行の旅に出ます。強くなったら、ぜひお手合わせを」
武闘家娘も頭を下げる。ハルトと手合わせしたいって自殺願望でもあるのだろうか?
そして、アイ達はしばらく話してから別れ、あたしたちは宿へと帰る。
たまたまあたしたちが居たから助かったけど、そうじゃなかったらアイ達のパーティーは全滅してた事だろう。初心者が受ける依頼に危険過ぎるのがあるのが問題なのか? 駆け出し冒険者が弱すぎるのか? 冒険者を続けて問題を洗い出そうと思う。
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