第五話 驚愕 (女の子視点)
「今、今、何したの?」
ハルトは椰子の実を指で毟ってる。そう言えば椰子の実って、ナタかなんかで切り裂いて開けるんじゃなかったっけ。いや、多分、ここの島の椰子の実は柔らかいのかもしれない。
「何って、石で枝を切ったダケだーョ」
表情も変えずにハルトは言う。ちょっと待って。椰子の実の枝を投石で切る?
まず、かなりコントロールが良くないと、枝にピンポイントで当たらない。それにハルトが投げたのはどこにでもあるような石だった。それで枝を切るって、かなりの威力が無いと無理なはず。けど、レベル5だし、もしかしたら、すぐ落ちそうな椰子の実だったのかもしれない。
「飲みなーよ」
ハルトは椰子の実に穴を開けて、それに毟った草の茎みたいなのを刺して渡してくる。
「あ、ありがとう」
受け取ると、椰子の実にはチャポチヤポと液体がはいっていて、刺してある茎はストローみたいだ。口をつけるとほんのり甘い青臭い味。けど、喉が渇いてたあたしにはかなり美味しく感じて一気に飲み干した。
「キミの名前は?」
あ、そうだ。まだ名乗って無かった。びっくりする事が多すぎて忘れてたわ。
「エリー、いや、エリよ」
エリーだと知ってる人が多いから、エリって名乗る事にした。どっちも愛称には変わりないし。
「エリさんねェ。ヨロシク」
ハルトは歯を見せて笑う。ヒゲもじゃだから老けて見えるけど、肌は皺もなくスベスベだ。よく見ると若いっていうのが分かる。あたしはハルトについていく。
「さァ好きなもの食べて。朝だからフルーツしか無いケド」
洞窟の中の石のテーブルの上の石の皿にはどっさりとフルーツが乗っている。濡れた服を着替えた後にハルトが奥から持ってきた。着替えは腰蓑みたいなものと、ココナッツのブラ。ちょっと過激だけど、これしか無いそうだから仕方ない。なんでココナッツのブラが有るのかは謎だけど、それよりお腹が空いた。けど、まずは鑑定。ハルトが毒を入れるとは思えないけど、一応念のためだ。
『力のリンゴ 力が1上がる』
「え……」
『賢さのバナナ 知恵が1上がる』
「うそ……」
『命の桃 素早さのブドウ 耐久のミカン 器用さのイチゴ 魔力のメロン 奇跡のチェリー』
「なんなのよこれー!」
あたしはつい叫ぶ。そりゃそうでしょ。
「え、もしかして、フルーツ嫌ィ?」
「嫌、逆よ。大好き大好き大好物ョ」
取り乱してハルト語が少しうつりかけた。
何、なんなのよコレ。全部『神々の木の実』じゃないの。アレもコレも全部全部。
アンブロシアとは食べるだけで能力値を上げると言う奇跡の実。極々稀に迷宮とかから産出されて、1個でどれだけの値が付くか分からない。今まで見た事があるのは、父様が献上されたのを食べてたのだけ。
「ほら、安全だョ」
ハルトがリンゴに手を伸ばすとシャリっと食べる。
「あーーーーーーっ!」
「大丈夫だョ。まだ沢山あるから」
あたしははしたないとは思いながらも、テーブルのフルーツに手を伸ばし必死に食べ始めた。
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