第四十一話 初討伐 1
「討伐、討伐、嬉しいなー♪」
ギルドに向かう僕の口からついついオリジナル討伐ソングが流れる。
「ハルト、目立つから歌うのやめよっか」
エリが微笑みかけてくる。けど、その仮面の奥の瞳は笑ってない。ちなみに、今日から僕らの仮面は新しくなっている。木の手作りから、金属の職人さんが作ったものになった。昨日、エリが買って来てくれた。ちなみにモモの分もある。
「あ、ごめんごめん、つい」
うん、周りの人ほとんどがこっちを見ている。そりゃ仮面の変な奴が歌ってたら、注目するな。
「ハルト、自覚をもった方がいいですよ。ハルトの歌は吟遊詩人も真っ青レベルなんですから」
モモが僕の真横に浮かんで来る。彼女は冒険の時だけマスクして羽根を解放するそうだ。天使というか堕天使みたいだ。よく考えると、仲間に天使がいる時点で目立ってるよね。浮いてるし。
けど、いつもモモは大袈裟だ。そんなに僕は歌は上手くないよ。
「ねぇ、モモ、やっぱり羽根、仕舞わない?」
エリも当然モモが目立ってる事に気付いてる。
「何言ってるんですか? エリがオッケーだしたんじゃないですか。羽根は私のアドバンテージ、アイデンティティです。これが無かったら私に取り柄が正義くらいになっちゃいます」
まあ確かに、僕とエリがヒールを覚えた今、彼女しか出来ない事と言えば飛ぶ事くらいかもしれない。それにしてもエリは凄かった。昨日、エリとモモに魔法について色々教えて貰ってたんだけど、その話の内容を聞いただけでヒールが使えるようになった。モモは凹みまくってたけど、エリが凄いだけだと思う。
「大丈夫よ。モモは羽根が無くてもとっても魅力的よ」
「あ、今、エリ、私の胸見ましたね。騙されませんよ。確かに可愛いのも正義ですが、それだけだとなんか色物みたいじゃないですか。私は実力で二人の力になりたいんです。ですから、羽根は断固仕舞いませんよ」
「そうね、羽根しまったくらいじゃモモは目立たなくならないわね」
「何言ってるんですか。私より、エリの方が目立ってるって自覚無いんですか?」
「ねぇ、ハルト、モモがウザいんだけど、ハルト聞いてる? あたしとモモ、どっちが目立ってると思う?」
うーん。なかなか難しい質問だなー。確かに羽根が生えた巨乳天使は普通に目立っている。けど、仮面をした気品溢れる動きの美しい少女も目立ってるんだよな。モモはジロジロ眺められてるけど、エリはもしかしたら貴族かもって思われてるからチラ見や後ろからしかガン見されてないんだよな。だからエリは目立ってるって自覚無いんだろう。
「引き分けだね。エリは自分の魅力が目立ってるって自覚をもう少し持った方がいいと思うよ」
「えっ、そうなの。けど、それってブーメランよ。ハルトこそ目立ってるって自覚を持って」
「そうですよ。出来るだけいつも自重って言葉を忘れないでください」
ブーメランって。僕は目立って無いと思うんだけどなー。二人は言い争ってたはずなのにターゲットが僕になって攻められる。けど、この可愛い仮面の女の子二人に僕が攻められてる状況がとっても目立ってるような気が……
そしてギルドに着いて解放された。
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