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 第四十話 回復魔法3 (モモ視点)


「分かりました。けど、魔法はハルトがかけてください」


 子供は気を失ってる。パッと見怪我は大した事無さそうだけど、口から血が流れてる。戸口に控えてる神官見習いを見ると、首を横に振る。私たちは子供の内臓がやられてるんだろうと推測している。明らかに子供の右半身は潰れている。そうだったら、ヒールの魔法なんて役に立たない。もっと上位の魔法じゃないと駄目だ。けど、私が知る限り、ここの神殿にはそんな魔法を使える人は居ない。もし居たとしても、魔法にかかる費用は一般人が払える金額じゃない。

 魔法をかけても手遅れ。どうしても回復術士が乗り越えないといけない苦難だ。私の魔法の回数が残ってるのなら、代わりに引き受けるんだけど。ハルトには悪いけど私にはどうしようも無い。


「えっ、じゃ、やってみるよ。上手くいかなかったら、あとは頼むよ。ヒール!」


 ハルトの手が光る。そして子供に触れる。光が子供に吸い込まれていく。私は心が痛む。ハルトは濡れたタオルで子供の血を拭う。子供は上体を起こす。えっ? 子供、ゾンビになった? いや、顔色いいし……


「おー、ボク、頑張ったねー」


 ハルトは子供の頭を撫でる。


「ありがとう、おじちゃん」


 子供がハルトに笑いかける。私は何を見させられてるんだろうか?


「おじちゃんじゃないんだけど、仮面してるから仕方ないっか。じゃ、お大事に。しばらくはあんま暴れるんじゃないぞ」


「ああっ、神官様、ありがとうございます」


 母親がハルトにすがりつく。ハルトはその肩をポンポンと叩く。


「お母さん、子供って予測出来ない行動をする事があるんで気をつけてくださいね。では、お大事に」


 親子は部屋から出ていく。


「良かった。大した怪我じゃなくて。かすり傷治すだけであんなに感謝されるんだな」


 治癒させたのはかすり傷じゃねーよ。骨折と内臓破裂だよ!

 そう叫びたくなるのを飲み込む。まずい、そんなに激しいヒールが使えるって神殿にばれたら、ハルトは神殿に囲われてしまう。誤魔化さないと、見習いがそこに居る事だし。


「馬車に轢かれたって言ってたけど、多分、小さな馬車だったから大した事なかったのよね」


 私は何を言ってるんだろう? 小さな馬車ってなんだよ。いかん、混乱してる。


「じゃ、まだヒール使えそうだから、次の人呼んで来て」


「気のせいですよ。ハルト、駆け出しは一2回しかヒールを使えないので、次は失敗するかもしれません。では、帰りますよ」


「そっかー。モモが言うならそうなんだろうな」


 私は急いでハルトを着替えさせ、宿へと戻る。



「ちょっとー。あんたたちどこ行ってたのー」


 宿の食堂で、エリが待ってた。なんだかんだで時間経っちゃったもんね。


「ああ、モモに回復魔法教えてもらってたよ」


 ハルトがのほほーんと答える。


「ちょっと! あんた来なさい」


 私の袖をエリが掴む。


「どうしたの?」


「ハルト大した事無いわ。女の子同士の話しよ」


 ハルトから離れたとこで、エリがヒソヒソ話す。


「あんた、何やってるのよ。別にハルトに魔法を教えるのを渋ってた訳じゃないのよ。まずは、ハルトに魔法の常識を教えてからじゃないと、絶対にやらかすわ。て言うか、やらかした?」


 私は一部始終をエリに話す。そして、このあとハルトには魔法常識講座が開かれる事に。


「誤魔化せたかどうか微妙なとこね。けど、あんた気付いてる? ハルトが回復魔法を覚えた今、あんたハルトより優れてるとこ何かあるの?」


 あ、そう言えばそうかも。私の唯一の長所が……

 いや、まだあのスキルがあるわ。いくらハルトでもあれは真似できないわ。


 読んでいただきありがとうございます。


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