第三十六話 試験 2
「なんでハゲが多いかって、そりゃ、戦士は兜被るからよ」
エリがモモに答える。声大きいって。
「頭が蒸れるのを嫌がって剃る人も居るし、蒸れて禿げる人もいるそうよ。あの人は天辺はつるっつるだけど、耳の上とか少し青いから多分後者ね」
そうなのか……
うん、兜は出来るだけ被らないようにしよう。
「おうおう、ねえちゃんたち、好き放題言いやがって。俺は好きで剃ってるんだよ、好きんヘッドなだけに」
ん、何言ってるんだこの人?
「あー、今のってもしかして、好きとスキンヘッドをかけたんですが? いわゆるオヤジギャグってやつですね」
モモの解説でやっと訳が分かる。面白くなさ過ぎて気付かなかった。
「どうやら、この試験官の方と私たちは笑いのセンスがズレてるみたいね。ジェネレーションギャプというものね」
エリの言葉で、試験官の頭が真っ赤になる。
「おうおう、好き放題言いやがって。ジェネレーションギャップもなんも俺はまだ若いわ。お前ら、合格したくねーみたいだな。おい、そこのうしちち、オメーからかかってこい」
「ざーんねんでした。私はもう合格してまーす。うしちちって私の事ですよね。それってセクハラ発言ですよね。ギルドの職員がそんな事言っていいんですかぁ?」
モモは胸元から皮の認証票を出す。試験官の目は釘付けだ。なんでモモを名指したかってどさくさに紛れてセクハラする積もりだったのかもしれない。
「それなら関係無い奴はひっこんどれ! それに人のヘアスタイルにイチャモンつけてきたのはそっちだろ」
「はいはーい。ヘアスタイルも何も髪の毛無いですよね?」
「じゃっかわしいわ。一切手加減なんかせんぞ。かかってきやがれ!」
モモは下がる。けど、頭が痛い。試験官は茹で蛸みたいに真っ赤になってる。まじでタコみたいだ。けど、それを言ったら焼け石に水だ。モモ、何無駄に挑発してんだよ。しかもそれが跳ね返ってくるのはモモじゃなくて僕たちなのに。
「好きな武器を取れ」
試験官は顎で、籠に刺さった練習用の武器を差す。
「エリ、危険かもしれない。僕が先にいく」
エリと番号札を交換する。正直人間辞めてそうな人を相手にするのは怖い。けど、試験官には僕で鬱憤を晴らして貰わないと、エリに何かあったら嫌だ。僕は籠からブロードソードを取る。
「待って、ハルト忘れたの。ハルトの武器は木刀でしょ。ハルト、よく武器壊すでしょ。練習用の武器でも弁償したらそこそこお金が飛ぶわ」
えー、まじかよ。まあエリがそう言うなら仕方ないか。パーティー資金はエリが管理してるししょうが無いな。僕は剣を戻し、腰のポートカインと書いてある木刀を手にする。
「おい、お前、舐めてんのか? それ土産物の木刀だろ」
「別に舐めてる訳じゃないですよ。ゴブリン相手なら木刀でも問題無いですよね」
「な、なんだと! 俺がゴブリン並みだと! ぶっ殺す! かかってこい!」
試験官の頭から湯気が上がりそうだ。なんで怒るの?
「いや、そう言う意味じゃなくて、このテストって、ゴブリンを相手に出来る力があればいいんですよね」
「そんなの知るか! こっちからいくぞ!」
試験官が剣を振り上げ構える。
「さすがハルト、挑発上手ですねー」
モモが何か言ってる。
「お前が言うなよ!」
つい突っ込んでしまうが、そんな事より、大剣をふり上げた試験官が近づいてくる。ああ、大怪我しなきゃいいな……
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