第三十五話 試験 1
「あのー。昇級試験を受けたいんですが」
僕とエリはギルドの受付嬢に認証票の裏を見せる。3日連続で薬草採取のクエストを成功させたので、スタンプは三つ溜まっている。モモもついてきてるけど、彼女は既にFクラス。この前ウザいように皮の認証票を見せつけてきた。あまりにもウザいから、「あなたも底辺には変わらないわよ」とエリが迎撃していた。E、F、Gクラスの素材はそれぞれ石、皮、木のどこにでもある素材だ。それを高い登録費用で売りつけてくる冒険者ギルドは正直あくどいと思う。三クラスまとめてギルドでは木石と呼ばれてバカにされている。と言う訳で、モモは今日は付き添いだ。
「それでは、お一人あたり一万ゴールドいただきますね」
お金を払うと金属製の番号札を渡される。12番と13番と書いてある。
「本日は昇格試験は第二訓練場で行われてます。その番号札は試験官に渡して下さい。無くしたら弁償ですので、大事に扱って下さい」
僕らは番号札を手に訓練場に向かう。
「じゃ、あたしが先に受けるわね」
エリは12番の札を取ろうとする。
「いや、僕が先に行くよ」
僕は男だ。さすがにエリを様子見に使うような事はしたくない。
「んー、出来れば私が先の方がいいわ。もし、試験官が一人しか居ないんなら、私の試験が無くなるかもしれないから。あと、ハルト、くれぐれも本気を出さないようにね。これはあくまでもテストなんだから」
Fクラスへの昇格試験は、試験官との模擬戦って聞いている。ゴブリンを倒せるくらいの実力が有るって試験官に認めさせればいいそうだ。僕が先だと試験が無くなるって、もしかしたら、僕が試験官にやられて怪我したりしたら、エリは試験を受けないって事だろうか? 情けない事にそれも有り得るからなんとも言えない。本気を出さないようにって、エリは手を抜いても合格出来るかもしれないけど、僕はレベル5。本気を出さないとまずいだろう。
「そうですよ。ハルトは私を倒す程の実力あるんですから、楽勝ですよ」
モモはそう言うけど、彼女は神官、回復職だ。いくら補助職と言えど僕は島で鍛えたから勝っても当然とは言えないけど、自慢にはならないと思う。これは本気で気を締めてかからないと。
「次はお前らかひよっこ共ガハハハハハハハッ」
訓練場で僕らを待っていたのは化け物だった。なんか嬉しそうに笑っている。はち切れんばかりの筋肉。身長は2メートルくらい有るんじゃないだろうか? スキンヘッドで顔中に傷が有る。タンクトップのシャツで身の丈程の大剣を担いでいる。大剣には刃はついて無く練習用の武器だと思うけど、あんなんで殴られたら一撃で重症だろう。なんでこんな奴が試験官してるんだろう? 明らかにオーバースペックだろ。まあけど、奥には神官もいるから怪我しても治して貰えるから安全だとは思う。
「私、疑問に思ってるんですけど、なんで冒険者ってスキンヘッドの人が多いんでしょうか? 髪の毛無かったら頭に怪我しやすいんじゃないですか?」
モモがエリにひそひそ聞いている。なんて言うか危機感なさ過ぎじゃないか?
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