第三十三話 密約 1 (エリ視点)
「眠ったわ。間違いなく」
あたしは壁から耳を離す。隣の部屋のハルトは規則正しい寝息を立て始めた。
「で、なんなんですかー? 大事な話って? 正義の話ですか?」
ベッドに座っているモモが急かしてくる。羽根は消している。
モモを仲間にしたあと、ギルドで籠を借りてハルトが薬草採る、モモが飛んで運ぶを繰り返して結構な額稼げたから、今日はそこそこいい宿だ。モモは思い込みは激しいけど、正義、正義言うだけあって信用は出来ると思う。正直、あたしだけではハルトの強さを隠し続ける自信が無かったから協力者が欲しかった。
「まずは、これを見て」
あたしは仮面を外す。
「え? なんですか? 恥ずかしい日焼けになってますよ」
「えっ!」
まじか。顔の下半分と目の周りだけ日焼けしてるのかも。鏡を見るとその通りだった。
「あーあ、日焼け止めでなんとかなるかなー。って違うわ。あなた、私の顔見てなんとも思わないの?」
「そうですね。確かに綺麗だとは思いますよ。それが重要な事ですか?」
まじか。ハルトもだけど、モモもあたしの顔知らないのか……パレードや式典とかに結構顔出してたから有名だと思ってたのに。もしかして仮面要らないのかも……
「あたし、いや、わたくしは実は王女よ」
「何言ってるんですか。またまたー。不敬罪で捕まりますよ」
しょうが無いから、ハルトにもまだ見せて無かったポーチの中から小さなブローチを出してモモに見せる。
「えっ、双頭竜と剣の紋章って。疑って申し訳ございませんでしたー」
モモはベッドから降りて土下座する。うっ、変わり身早いわね。本当にこの娘を信用していいのだろうか?
王家の紋章は王族しか所持出来ない。それを破るとそれなりの罰がある。
「止めてよ。今まで通りでいいわ。この事は誰にも絶対に言わないでね。あなたの正義にかけて」
「分かりましたっ! 私の正義にかけて誰にも言いませんっ!」
モモの正義って、いつも口に出してるからなんか軽いような気もするけど、ここは信じよう。あたしは、あたしに起きた事を話す。モモは黙って聞いてくれた。
「それよりもハルトよ」
「ハルトですかー? エリが王族って事より凄いんですかー? 確かに薬草採るのは化け物ですけどそれがどうかしたんですか?」
「その前に、あたしの詳細鑑定ではステータスも見えるの。今からあなたのステータスを書いてあげるわ」
あたしはモモを詳細鑑定して、書き留め渡す。
『モモ ヒューマン 17歳 レベル18
力 19
器用 18
敏捷 14
耐久 19
知力 9
魔力 7
ヒットポイント 20
マジックポイント 9
スキル 有翼化 レベル5
格闘術 レベル3
聖魔法 レベル1
三刀流 レベル1
魔纏術 レベル10』
モモのステータスはかなり良いと言える。けど、神官って言うより、格闘家だ。魔纏術って言うのは、確か体に魔力を纏わせる術。これが出来ると魔力を纏わせた拳で物理無効な魔物を殴れたりする。なんかモモは天使化のスキルとか言ってたけど、有翼化のスキル、ただ羽根が生えてるだけだ。あと三刀流ってなんだろう? 初めて見るスキルだ。
「天使化って正確には有翼化って言うんですねー。これ、間違ってますよ。私はもっと知力と魔力、高いですから」
何を根拠にそんな自信まんまんに言ってるんだろう?
「そんな間違いする訳無いじゃない。けど、そこまで低い訳じゃないわ。他の数字が高すぎるのよ。モモ、魔法使うより体動かしてた事の方が多いでしょ。レベルアップするときに上がるステータスは良く使ってたものが上がり易いのよ」
「しょぼーん。これから毎日魔法の特訓しよ」
しょぼーんって口に出す人初めてみたわ。なんかイラッとするわ。
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