第三十二話 仲間
「言う事聞けって、もしかして私にあんな事やこんな事するつもり?」
天使は自分の体を抱きしめる。あんな事や、そんな事ってもしや!?
べちん!
エリが天使の頭をはたく。
「ダメよ。そんな事したら、あたしがあなたをぶっ叩くわよ」
「もう、叩いてるじゃないの。首痛いんだから『ヒール』」
天使が頭に手を触れると、その手が白く光る。あ、回復魔法使えるんだ。
「そもそも、なんで、あなた、ハルトに絡んできたの?」
「え、分からないの? そんな怪しい仮面した人は悪い奴に違い無いでしょ。私の正義の心が動いたのよ」
やっぱ、ヤバい人だ。仮面ほどじゃないが、怪しい人物なんて街にはしこたまいる。その全部にこの天使は喧嘩売るつもりなんじゃないだろうか? やっぱり関わらないに限る。
そして、天使は語り始める。くどくて脱線しまくるから要約するとこういう事だ。
彼女は元々小っちゃな村の出身で、回復魔法が使えるようになってチヤホヤされて育ったらしい。成長して天使化というスキルを貰って村の近くの山で修行してたそうだ。そして村でポートカインに急成長してシルバーランクになった冒険者が居るという噂を聞き、そんな早く強くなれるのは魔王に違い無いと思ってここに来た。神殿で回復の仕事をしながら魔王を探していて、そこに怪しい仮面の僕が来たから、魔王に違い無いと思って天使化して懲らしめようとしたそうだ。
思い込みと勘違いしかねーよ。
僕はなんか頭痛くなってきたから後の事はエリに任せて、希少な薬草を探す事にする。籠はないから僕の袋に入る分だけ採って、納品して籠借りてまた来よう。
「ハルトさん! 私、手伝いますっ!」
天使がこっちに向かって飛んでくる。エリもついて来てる。何本か希少な薬草を手に入れて、戻ろうと思ってたところだ。なんか熱心にエリが話してたみたいだけどなんの話をしたんだ?
「え、一緒に薬草採るの?」
「違いますよ。エリさんに聞きました。酷い目にあったんですね。あなたのパーティーメンバー、ぎっちょんぎっちょんにしてギャフンと云わせてやりましょう! そして正義を世に知らしめましょう」
天使は胸の前で両手を握り締めてる。
え、まじか、エリ、話したのか。どうでもいいけど、なんか天使の言葉使いが古いな。田舎育ちだからかなー?
「ねぇハルト」
エリが話しかけてくる。
「ハルト仲間が欲しいって言ってたじゃない。だから、お願いしたの。さっき見たと思うけど、彼女、回復魔法も使えるし、鑑定したらかなり強いわ。それに、その羽根も消せるそうだから、目立たないわ」
いや、羽根が無くても見た目と性格で目立ちまくるんじゃ? んー、回復魔法が使える仲間が欲しいって言ったのは僕だから仕方ないか。それにエリなら思い込みが激しい天使と上手くやってけるかもしれない。
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