第三十話 天使
「魔王よ、その悪行を悔い土へ還りなさい」
心を洗うような澄んだ声。僕の目の前に天使が降り立つ。ステンドグラスの光を浴び、まるで女神様みたいだ。キリッとした端正な顔、ウェイビーな金髪に青い目、右手には輝く剣、左手には鏡と見間違うくらい磨かれた盾。背の丈は160センチ有るか無いかくらいだろう。そして、何より目を引くのは大っきな胸。メロン、メロンが二つ生えてるみたいだ。僕は夢でも見てるのか?
ん、見惚れててスルーしかけたけど、なんか物騒な事言ってたような?
「えっ? 魔王? 僕っ?」
「そう、貴様の事だ。この世に仇なす人類の敵。今ここで、私が引導を渡してくれる。ついて来い」
「何よ? ちょっと待ってよ、貴方は誰? 何者なの?」
エリが僕と天使の間に入ってくる。
「私の名はモモエル。神に選ばれしスキルを持つ者。先日、神託でこの街に強大な力を持つ者が現れると承った。それは貴様に違い無い。私には見える。その強大な力が」
「ん、なにそれ。確かにハルトは強いわ。けど、邪悪じゃないわ。天使に喧嘩売られる筋合いは無いわ」
おお、さすがエリ。天使相手にも怯んでない。
「その前に、人違いじゃないのか? 僕は強く無いよ?」
僕はレベル5のザコだよ。悲しい事に。
「口ではなんとでも言える。正さを示したいのなら力をみせろ。外に出ろ」
天使、モモエルはツツーと浮かんだまま外に向かう。なんか会話が成立してないような?
「ねぇ、なんなんだろこれ。何も無かった事にして採取に行っちゃだめかなー」
「そうしたいとこだけど、見てる人が沢山いるわ。天使を蔑ろにしたら、今後神殿の治療を受けられなくなるかもしれないし、神官の仲間が出来ないかもしれないわ」
さっきエリ、思いっきり蔑ろにしてなかった? エリが言う通り、参拝者たちは、驚いて僕らに注目している。
「けど、なんか明らかに面倒くさそうな人だったよね」
「そうね、けど、しょうが無いわ。取り敢えずついていきましょう。ハルト、頑張って」
エリがそう言うならしょうがない。なんとか説得しよう。
「うん、分かったよ」
天使なんて物語の中の生き物だと思っていた。正直、今、何が起こってるのか訳が分からない。けど、取り敢えず天使が行った方についていく。
「準備はいい?」
外では天使が屈伸運動からの伸脚運動をしている。胸部で何かが跳ねている。本当に人間なのだろうか? あ、天使か。
「だから何の準備だよ?」
「ルールは簡単、戦って勝った方が負けた方の言う事を聞く。私の望みは一つ。私に負けたら、貴様は私と一緒に人がほとんど居ない所でひっそりと暮らす事」
モモエルの言葉にエリが返す。
「え、それってもしかして、プロポーズ? ハルトを婿にしてスローライフするつもりね。だめっ。ハルトと先に出会ったのは私よ!」
えっ? プロポーズ? たしかにそう聞こえない事も無いけど、たしかに天使は魅力的だけど、まだ、出会ったばかりだし。エリだっているしどうしよう?
「ハルト、何考えてるのよ。いいわよ。殺さない程度に軽く揉んでやりなさい!」
「えっ……も、揉むの? 軽く?」
僕はつい天使の物体を見てしまう。
「何勘違いしてんのよ。ほら、ほら、厳ついおっちゃんとかが、言うでしょ。『いっちょ揉んでやるかー』って。あれって、軽く相手してやるよ的な意味でしょ」
「そう……なんだね。けど、僕は女の子相手に手は上げられないよ」
天使と言えど可憐な女の子だから、戦うのはちょっと……
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