第三話 出会い
「おーい。誰か居ないかー!」
僕は島の桟橋から大声で叫ぶ。この島の人口物は、僕が作った小屋以外これしかない。切り立った入り江にあるボロボロな木で出来た桟橋。1年前の僕らはここから上陸した。毎朝ここに来て叫ぶのが僕の日課だ。もしかしたら誰かスライム島にやって来てるかもしれない。けど、今日も空振りだ。そして次は僕みたいに誰かが流れ着いていないかビーチを見てから、僕の一日が始まる。
「!!!」
僕はビーチで言葉を失う。そして気がついたら駆け出していた。なんと、ビーチの奥の方に小舟が見える。大きさから、湖とかで水遊びするような1人2人乗りくらいだと思う。心臓がバクバクと跳ね上がる。近づくと少し不安に駆られる。舟はビーチに打ち上げられてるけど、ここから見ても明らかに後ろの方が破損している。けど、修復すれば使えるかもしれない。僕は期待に胸を膨らませながら、舟に近づく。
「うーん……」
舟から明らかに声がした。もしかして生存者? 舟の中を覗き込むと、なんと人がうつ伏せで倒れている。僕は頭の中が真っ白になる。人、人だ!!
1年ぶりの人だ。こっからは顔は見えないけど、なんか濡れてるけどツルツルして高価そうな服を来ている。シャツにパンツ。髪も長いし後ろ姿から多分女性だ。どんな人だろう? 声がしたから生きてる。けど、びしょ濡れだ。壊れた舟にしがみついてなんとか生き延びたんだろう。可愛いかな? いや、そんなのどうでもいい。話せるんだよ。人と話せるんだよ。僕は恐る恐るその人に手を伸ばす。背中をトントンと軽く叩く。
「ガッ。ゴボッ」
多分気管に入った海水を吐き出したんだろう。背中越しで良かった。さすがに女性は嘔吐くとこを人に見られたくないだろう。
「ここは……」
まるで例えるなら春風のような澄んだ暖かい声。絶対に綺麗な人だ。お姫様かもしれない。彼女は身を起こし振り返る。髪が顔に貼り付いていて見えない。彼女は顔の髪を払う。
「キャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
絹を裂くような悲鳴。この人、溺れかけてたんだよな。元気だな。よく息がこんなに続くな。
僕は息を呑む。美人。可愛い系の美人。ヤバい。こんなに綺麗な人を近くで見るのは初めてだ。女の子は化粧で化ける。けど、彼女の顔は化粧など全くしてない。少し青みがかかって血色が悪いのにこの美貌。健康だったらどんなになるんだろうか。僕の目の前で、彼女の目が閉じていく。そしてパタリと横になる。なんで? なんで叫んでしかも気を失ったんだ? 僕を見てだよな。もしかして、僕を変質者か何かと勘違いしたのか? 確かに髪は伸び放題、髭も伸び放題だ。けど、鋭利な刃物なんか無いからしょうが無いじゃん。
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