第二十九話 神殿
「僕は弱い。若干は戦う事は出来るけど、僕のスキルは『ドロップ率アップ』だから戦闘に向いてないからね」
朝食を食べ終わって僕は切り出す。ここは宿の食堂。昨日は銭湯に行った後、エリがお金を出すからどうしてもという事で、普通の宿に泊まった。エリは相部屋でいいって言ったけど、お金はかかったが個室を取った。さすがに島ではしょうがなかったけど、未婚の女の子と相部屋はまずい。
「大丈夫よ。戦闘はあたしがやるから。レベル20はだてじゃないわ」
確かにエリは強い。素手であれだけやれるから武器を持ったらかなり強い事だろう。けど、お金に余裕が出来るまで武器と防具は要らないって言うんだよな。討伐依頼を受けるためにはやはりちゃんとした装備が欲しい。
「それで、エリが前衛、僕がそのフォローをするとして、さらに仲間が居れば戦いが楽になるから強くなれるのが早いんじゃないかなー?」
「えっ、ほんとに? ハルト、仲間が欲しいの?」
何故かエリは驚く。なんでだろう?
「うん、まずは怪我とかを治療できる神官。あと、魔法とかしか効かない魔物も居るから魔道士が仲間に居ると心強いな。雑用依頼をこなす分にはいいけど、討伐依頼や、魔窟の探索とかするなら魔法系の職業の仲間が必要だよ」
「そうね。じゃ、あとで神殿にでも行ってみる?」
「今日も薬草狩りする予定だから、その前に行こう」
まずは、神殿に向かう事になった。パーティーを組んでないソロの神官は神殿で癒しの仕事をしている事が多い。ギルドで紹介してもらうとお金がかかるから、神官は神殿に直接行って雇うのが一般的だ。1日に3回以上癒しの魔法を使える神官はそれだけでなんとか生活出来るから、神殿で仲間に出来るのは、癒しの魔法を修行中の者か、一二回しか使えない駆け出しになってくる。それでも仲間にするハードルは高い。ここ、ポートカインですら、冒険者として危険に身を曝そうとする神官はあまり多くない。癒しの魔法さえ覚えれば、あとは冒険者が自動的に怪我を治療に来るからだ。
僕らは街の中央広場にある神殿に向かう。中に入り、エリが神像に祈りを捧げたあと、僕も続く。神殿では大怪我とかじゃ無い限り、まず祈りを捧げないと何も出来ないしして貰えない。僕は片膝を突き、女神像に祈る。
『僕がエリを守れるよう強くなりますように』
目を閉じて祈る。そして目を開けると、目の前にユラユラと光り輝く羽根が1枚落ちてくる。何気なく手を伸ばし触れると羽根は弾け光の粉になって消えていった。落ちて来た? 見上げると、高い天井からふんわりとした布を巻き付けたような服を来た、羽根を広げた女の子がゆっくりと降りてくる。ん、幻でも見ているのか? 僕は目を瞑り開く。居る。羽根が生えた美少女が!
天使?
天使は神の使いって聞いた事がある。もしかして、僕の祈りが神様に通じたのか?
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