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 第二十四話 街


「いえ、お金は払いますわ」


「いえいえ、私共はゴロツキから守っていただいたんですから、お代は結構です」


 ポートカインの乗り合い馬車の停留所で、エリと御者が言い合いしている。

 けど、僕はそれはそっちのけで、街をぐるりと見渡す。


 帰って来た。


 帰って来たんだ。


 長い。長かった。


 見慣れた街並み、この街独特の塩と魚の香り。住んでた時には好ましく無かったこの臭いさえ懐かしい。

 初めてここにやって来た時の事を思い出す。冒険者になって一旗上げようと、村から幾ばくかのお金だけを手にやって来た。

 まず圧倒されたのが建物の大きさと人の多さ。僕の来た村と比べたら、異世界のようなものだ。この街がここまで発展したのは冒険者によるところが大きいと言う。

 ここポートカインからは幾つもの魔窟へと向かう事が出来る。ここは元々は冒険者が魔窟へ行くための拠点が発展した街だ。だから、街を防衛する城壁も無く、関所も無い。来る者は拒まず、去る者は追わない出入り自由な街だ。その懐の広さが良いとこでもあり、逆にその自由さが街の治安を悪くしている。ほとんどの商業施設は、今僕たちがいる目抜き通りに隣接している。


「ただ乗りしたって後でゴネられたら嫌だから、お金は叩きつけてやったわ」


 何故か満足げにエリが話しかけてくる。んー、少しでもお金が浮けば生活の足しになるのに。やっぱり貴族だなー。お金よりプライドの方が大切みたいだ。けど、エリはそれでいいと思う。僕がしっかり稼げばいいだけだ。稼ぐに追いつく貧乏なし。冒険者ギルドの依頼は、もう夕方だからほぼ無いかもしれない。けど、常設クエストはあるはず。

 

「エリ、宿を取る前に冒険者ギルドに行こう。エリは登録してるの?」


 してないと思うけど、一応聞く。


「登録も何も、冒険するのは初めてよ」


「じゃ、一緒にまずは登録しよっか」


 冒険者登録は何度でも出来る。冒険者ランクの最下位のGクラスは、お金を払って認証票を貰うだけだ。Gクラスの木の認証票には名前と性別が書いてあって、その裏に依頼達成した時にギルド受付で、スタンプを三つ貰ったら、Fクラスへの昇格試験を受けられる。それで合格したら昇格して、書類に記入してギルドに個人情報が登録されて、晴れて一人前の冒険者と認めて貰える。冒険者登録時には一人三千ゴールドかかる。それで貰えるのは木の認証票だけだから、ギルド側から見ると、何回登録されても儲かるだけだ。ちなみに、前の認証票は島に居た時に島から流してしまった。もしかしたら誰かが拾ってくれないかと思って。

 冒険者ギルドに行く前に、エリがどうしてもって言うから武器屋に寄っていく。買ったのはお土産用の木刀。ご丁寧にも『ポートカイン』って彫ってある。エリは店員に材料を確認してて、これもひのきだそうだ。樫の木じゃダメらしい。なんのこだわりだろう。予想通りこれは僕の武器で腰に佩かせられる。

 街の中央にある冒険者ギルドに着く。この建物は古く、木造で補強増築を繰り返したもので、街の創建当時からあるらしい。けど、それではスペースが足りず、裏には別館がくっついている。入口は年代ものの木製のスイングドアでそれを開けて入る。仮面を着けてる僕らに一瞬好奇の視線が集まるが、それだけだ。冒険者は個性的な格好をしてる奴が多いから、仮面くらいなんて事ない。


「おい、ハルト、ハルトじゃねーか!」


 ずらり並んだ円卓の一つから声が飛んでくる。よく聞いた事がある声だ。この世で一番聞きたく無い声だ。


 読んでいただきありがとうございます。


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