第二十三話 国乱
「それに、あいつらは襲いかかってきたけど、それも簡単にもみ消せると思うわ」
仮面で表情は分かんないけど、エリのへの字口からして顔を顰めてるんだろう。
「ここは確かメーガス子爵の領地だから、コイツらそこの兵士か騎士よ。さっきの剣はゴロツキが持ってるような剣じゃないわ」
そっか、スキンヘッドが持ってたミスリルとか言ってた剣は、儀礼用の剣だったのか。それで合点がいった。直ぐ折れる訳だ。
「だから、コイツらを街にしょっ引いてったとしても、間違い無く無罪放免。下手したら、逆にあたしたちがお縄になるわ」
「え、なんだそれ。僕らは何も悪い事してないのに」
「それだけ今この国は腐ってるって事よ。誰でも彼でもお金のためには何でもする。しょうがないわ。ハルトも知ってるでしょ。次の王は誰になるかって王族が争ってるのを」
今少し引っかかった。庶民は王様の事を王とは言わない。恐れ多いから『王様』って必ず言う。けど、今、エリは確かに『王』って言ったよな? まあ、エリが言わないから聞かないけど、もしかしたらエリは貴族の中でもかなり上の方なのかもしれない。王と血縁関係がある公爵家とか。けど、そこは今はまだつつかないどこう。
「詳しくは知らないけど、そうらしいね」
確か、今の王様は病に伏せってて、優柔不断で次の後継者を指名してないって話だ。それで、王子様やお姫様がそれを巡って争ってるって噂を聞いた事がある。
「争うのに一番必要になるのは『お金』よ。それでお金を持ってる人が力を持つ。力を持つためにはお金が要る。だから貴族はこぞってお金を集めてるのよ。だから、このセコい旅人からカツアゲする事の指示も多分ここの領主が出してるのよ。だから、コイツらは放置してくに限るわ」
「ぐぅう。賢い嬢ちゃんだな」
スキンヘッドが顔だけ起こして口を開く。
「今日のとこはこれで勘弁してやるぜ」
勘弁するも何も、この人、倒れたままじゃん。負け惜しみか。
「勘弁してあげるのはこっちの方よ。良かったわね。ハルトが持ってたのがひのきの棒で。普通の武器だったら、あんた真っ二つになってたわよ」
なんかエリがスキンヘッドを挑発してるけど、それはないない。僕の一撃はたまたま急所にでも入ったんだろう。
「ほんとなら、迷惑料であんたたちからなんか貰いたいとこだけど、それじゃあたしたちが悪党みたいだから止めといてあげるわ。じゃ、ハルト行くわよ。御者さん、あなたはただの御者って事でいいわよね」
エリが御者に笑顔で念を押す。御者がスキンヘッドとグルだった事は見逃してやるからとっとと出発しろって意味だろう。怖いなー。
「はい、ただの御者です。では、街に向かいましょうお嬢様」
明らかにびびってるよ御者。僕らは馬車に乗り込んで進む。なんかモヤモヤだなー。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。