第二百二十二話 姫様
「ちょっと、何それ? 種族『竜魔王』って?」
エリがナディアに詰問する。やべ、殴りかかるんじゃないか?
「エリ、僕が説明する」
「あっ、ああーっ」
ナディアがよろける。その体から黒いもやみたいなものが立ち上り、ナディアの上に黒い球体が現れる。多分あれは魔皇珠。それが五つに割れて小さな珠になる。魔将珠か。一個はナディアに吸い込まれて、一個はは僕の前に浮いている。後の三つはどっかへと飛んで行った。僕の目の前の珠が小さな人の形を作る。そしてそれがパンドラになった。
「パンドラ、ナディアに服を出してくれ」
「あっ、はい、主様」
「レイゲルス様、ありがとうございます」
パンドラがナディアの方に行く。僕はナディアに背を向ける。ナディアが服を着たのを確認して、みんなを集めてヤヌスとの事を詳しく話した。そして、ナディアも自分の事を話した。まあ、ヤヌスが言ってた事と大差なかったけど。
「レイゲルス様じゃなくて、ハルト様なんですね。まさかそんなに年月が経っていたなんて」
ナディアには竜の時の記憶は無いそうだ。
「あーあ、手に入ったのは魔将珠一個だけ。これだけじゃ、世界征服出来ないわ」
なんかパンドラがまたブラックなジョークを言ってる。その魔将珠を五つ集めた魔皇珠だってたいした事無いから。
「ナディアさん、もうドラゴンが暴れる事は無いんですよね」
エリがナディアに尋ねる。
「はい、これくらいの破壊衝動ならなんとかなります。それに、ハルト様もいますので」
ん、なんかこのナディアさんも何故か僕についてくるつもりなんじゃ?
「じゃ、あたしちがドラゴンを倒したようなものね。お兄様と話して混乱を元に戻さないと。それにこの国をもっと良くしないと」
エリが僕の顔をじっと見つめてくる。もしかして、告白? こんな時、こんな所で!
「ハルト、驚かずに聞いて。あたしはこの国の王女エリザベスなのよ。エリー姫って呼ばれてるわ」
ええーっ。貴族とは思ってた。けど、お姫様!! そう言えばダメな方の王子様がごちゃごちゃ言ってたけど、本当だったのか! げっ、色々無礼な事しまくってる。これ、手打ちにされるんじゃ?
「やっぱりあんまり驚かないのね。気付いてたのね」
驚いとるわ。気付く訳あろかい。そんな粗暴な姫がどこの世界に居るんだよ。
「それで、ハルト、お願いがあるんだけど、あたしの騎士になってこの国を良くするのを助け」
「嫌だ!」
「えっ……」
げっ、お姫様の言を遮って断っちまった。
「あっ、いえ、そのー。なんて言いましょうか、ぼっ、僕のような何も出来ない者には無理ですよ」
「ハルト、いつも通りでいいわよ。そうよね、ハルトはずっと島に居たから騎士のような自由が利かない職につくのは嫌よね」
そんな事ゆーとらんやろ。少しは話聞けや。けど、お姫様にはそんな事言えません。その前にエリ、いや姫様はお強いから自分でなんでも出来るだろ。
「とりあえず、みんな家に行くわよ」
え、家って? もしや。
そして、僕らはエリに城へと連行された。
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