第二百十九話 島ルート 7
「クゥゴゴゴゴーーーーッ」
ドラゴンが唸る。僕にはなんか哀愁を含んでるようにも聞こえた。煙が晴れその全貌が明らかになる。さっき僕がほがした穴は綺麗さっぱり無くなってる。大きい。さっきより大きくなってる。鱗はギラギラ輝いてる。前回はハリボテだったけど、もしかしたら今回は強いんじゃないか?
「パンドラ!」
エリが呼ぶ。
「何よ派手顔」
大人しく浮いてたパンドラが不機嫌そうに言う。
「ちょっと耳貸して」
なんかパンドラとエリがコソコソ話してる。なんか『フルーツ』とか『突っ込んで』とか聞こえたけど、訳分からんし、僕に聞かれたくない話なんだろうから、ま、いっか。
「ドラゴン! 聞いてくれ」
竜の目が僕を見る。けど、返ってきたのは言葉ではなく、前足だった。僕は大きく飛び退きかわす。やっぱり言葉は通じないのか?
「ハルト、あたしに任せて」
僕の横をエリが駆け抜ける。ビキニだけで武器も持たずに。両手が金色なのはゴールドが手袋になってるのか?
「モモ、モモツーは空から撹乱して、アイは魔法で補助、エリツーは前で足の攻撃を引きつけて」
「僕は?」
「ハルトはまだ下がって見てて」
まじか。けど、順当な流れだろう。僕は弱いからな。エリの言葉通りに仲間が動く。僕は下がって足を引っ張らないようにする。
モモ、モモツーは空を駆け回りドラゴンにチクチク攻撃している。エリとエリツーは前に出てドラゴンの前足を攻撃してる。ドラゴンが大きな口を開け、エリに向かって迫る。げっ、エリは気にせず突撃してる。あ、エリが喰われた! くそっ、どうにかして助け出さないと。いや、竜の顎は閉じない。なんと竜の口の中でエリが顎を支えて仁王立ちしている。まじか、本当にエリは人間なのか? 何を考えてそんな事してるのか、一歩間違ったら丸呑みされるぞ。エリの体が震える。そりゃそうだドラゴンの噛む力が弱い訳ない。助けないと。ドラゴンはゴンゴンと顎を地面にぶつけ閉じようとする。けど、エリはそれにも耐えている。
「パンドラ! 今よ!」
何が今なのか? パンドラが矢のようにドラゴンの口に飛んで行く。そしてエリの所で何かを出した。金色の細長いものが幾つも転がり落ちる。バナナ?
「しゃあっ!」
エリが気合いを入れると、一種ドラゴンの顎が下がった。
ガチン!
大きな音を立て閉じる竜の顎。口から飛び出し地面を転がるエリ。ドラゴンの喉が動く。何かを飲み込んだ。
え、パンドラが居ない。
「パンドラっ!」
エリが叫ぶ。もしかして飲み込まれた?
竜は立ち上がり動かなくなる。目を瞑ったと思ったら、僕を見る。なんか優しそうな目だな。ん、手が動いた?
パーーーーン!
ドラゴンが体の前で柏手を打った。その大きな音につい目を瞑ってしまう。その次に見た光景は、ドラゴンが四つ足をついて僕に背を向けて走り去る姿だった。まるで小さなトカゲが逃げていくかのように。
ブチブチブチブチッ!
何か千切れる音。目の前でドラゴンの尻尾がビッタンビッタン跳ねている。そう言えばトカゲって敵に襲われた時に尻尾を切って逃げたりするんだったよね?
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