第二百十八話 島ルート 6
腐った煙がドラゴンを覆い尽くしていく。さらにそれが地面に広がる。確か前回は、その腐った煙を根こそぎエリに食べて貰ったんだった。そして、ガワだけドラゴンの何か分からんものになって僕が突撃した時に触れてもいないのにグチャグチャになったんだよな。この煙はドラゴンの変身してる姿を守る繭みたいなものだろう。またエリに食って貰うか? いや、そもそもだけど、何でドラゴンと戦わなきゃならんのだろうか? よくよく考えると、ドラゴンは森を食ってただけで、襲いかかったのは人間の方だ。なんて言うか、もっと平和な解決方は無いのだろうか?
「ちょっと、何ボーッと待ってんのよ」
アイが声を荒げる。残念な事にローブを着ている。けど、女の子ウォッチングのプロの僕には分かる。ノーブラだ。だてにビーチの陰に隠れて女の子を見続けた訳じゃない。
「せっかくチャンスじゃない。今、ハルトのお陰で弱ってるんでしょ。とっととぶっ倒しちゃいなさいよ」
確かにそうだ。けど誰が好き好んで肥溜めみたいな香りを放つ煙に突っ込みたいだろうか?
「じゃ、あんたが突撃しなさいよ」
エリが当然の事を言う。前回、エリがアイに煙に突っ込まれた話はしてるから、みんなアイとは距離を取ってる。
「嫌よ。このローブ気に入ってんだから。こんな時にバナーヌが居れば。しょうがないわね、あんたたちはそこで芋引いて見てなさい」
アイの手にでっかい白い丸太が現れる。それの端に手を添え普通に槍でも投げるかのようにぶん投げる。丸太は一直線に煙の塊に飛び込むが、煙に触れた所からまるで飴かなんかが溶けるかのようにドローリと溶け少しの液体になって地面に落ちる。
「うわ、何あれ、あそこに突っ込んだらああなるの……」
エリが呆然としてる。そりゃそうだ。前回突っ込んで大丈夫だったからもしかしたら突撃しようと思ってたのかもしれない。あの煙に触れたらエリの金色のビキニ以外は腐食してしまう。前回エリが無事だったのは謎だ。皮膚も溶けそうだよね。
「アソコに突っ込んだら、ですかぁ?」
「黙れモモ」
「はうっ!」
モモが脱線しそうになるのをエリが掣肘する。いいボディブローだ。
なんで、うちの女の子たちはこんな事態でも巫山戯る余裕があるのだろうか?
そうこうしてる間に、煙が少しづつ薄くなる。その合間からギラギラ光る黒い鱗が見える。
「じゃ、みんな行くわよ! 全力でやるわよ。ハルトもお願い」
エリの右手に纏わり付いていたゴールドが歪な槍の形になる。
「待ってよ。なんで戦うの? そうだ、逃げよう。遠くまで逃げよう」
「それは、無理よ。あいつをのさばらせたら、大勢の犠牲者が出るわ」
「だからって、あいつを倒したら、次は自称魔王って奴が現れるんだろう? やっぱり戦いは何も生まない。なんか、なんか他に方法は無いの?」
僕はゆっくりと歩き出す。そして、ドラゴンの前に立つ。
「ねぇ、戦うのは止めよう。君の望みはなんなんだ? 話し合おう」
なんでうちの女の子たちは、すぐに力でか解決しようとするのだろうか? 人間には口がある。言葉で解決出来る事もあるはずだ。
「ハルト、無駄よ。あいつの知力では言葉は通じないわ。知力で言葉は通じない? 落とされた知能……」
エリはそう言うけど、動物とだって、心が通じ合えば理解しあう事もできる。
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