第二百十七話 島ルート5
ネクタリン号は速かった。
空を駆け抜け、雲を突き抜け、山を超え。目の前に見える黒い小山。暗黒竜だ!
「突撃しますっ!」
下からモモの声。何言ってんだ?
「モモ、ステイステイ。突撃したら死んじまうよ」
「はい、ドラゴンが死んじまいますっ!」
「ちげーよ、僕らが死ぬよ」
「そうよ、せっかく拾った命。無駄にしてまるか! モモっ。合図とともに急上昇よ!」
後ろからアイが何か言ってる。やな予感しかしない。
「えいっ!」
背中に何かぶつかってくる。
「急上昇よ!」
何っ! アイに舟から突き飛ばされた。なんてこったい! 僕は顔から黒い小山に突っ込んでいく。アイ、鬼か。死んだら絶対呪ってやる。せめてもの抵抗で僕は頭を両腕でガードする。
しゅぼん!
なんかぬかるみに石でも投げたような音がして、僕は黒いものを突き抜けた。
ドゴッ!
次はやらかい土。良かった。たまたま地面の柔らかい所に落ちたみたいだ。まあ、なんとか無事だ。頭を物的立ち上がると、なんかヤベー事になってる。僕が居る所を中心にでっかいクレーターが出来てる。魔法、多分魔法だな。まさかドラゴンに特攻させられるとは思わなかったけど、多分アイが僕になんか魔法をかけてたんだろう。けど、外道な魔法だな。
「ハルトーっ!」
エリ、エリツーが走ってくる。その上を飛んでるのはモモツーとパンドラかな。その後ろには胸に大きな穴を空けたドラゴンが背中を向けて佇んでる。なんか毎回思うけど、ドラゴンくそザコ過ぎないか? 毎回戦おうとした時には死んでるような? いや、死んで無い。なんか口あたりから煙っぽいものを吐いてそれが体を覆い始めてる。あ、そうだ、これから変身するのか。
「ハルトっ!」
エリが僕に向かってダイブしてくる。何がそんなに嬉しいんだ。エリの格好ヤバいし、いつもの金のビキニだよ。かわすべきか? 受け止めたらふっ飛んで頭打って死にそうな気もする。けど、僕だって男だ。可愛い女の子が胸の中に飛び込んでくるのを受け止めずして何が男だ! 受け止めようと構える僕の上な影が差す。
「はーい、残念でーす!」
羽根を広げた天使が目の前で獲物をゲットした鷹みたくエリをかっ攫っていく。そして舞い上がってエリを片手に降りてくる。
「何、どさくさに紛れてハルトにセクハラしようとしてるんですか?」
「そりゃ、嬉しかったに決まってるでしょ。もうだめ、死ぬーってなったのを助けてくれたのよ。ハグくらい当然の権利でしょ。なんであんたが抱きついてくるのよ、離れなさいよ。それより、アイ何よそれ。色仕掛けのつもり? みんなで約束したでしょ?」
エリはモモを引き剥がす。
「事故よ事故。けど、私の恥ずかしい姿、ハルトに見られちゃったわ。こりゃ責任取ってもらわないとねー」
手ブラのアイがやってくる。さっきは恥ずかしがって一言も話さなかったのに、今は堂々としてる。目のやり場に困るよ。
「それよりさ、ドラゴン大丈夫なの?」
「そうそう、あたしの話を聞いてよ。ドラゴン鑑定したらステータス倍だったのよ。それに気付かずに特攻したからバナーヌとアイは秒殺されたわ。それに、ハルトのステータスも上がったまま。今って2回目ってハルト言ったわよね。多分、ループしてもその前のレベルや上がったステータスは持ち越すみたいね。何よそのバカ設定!」
まじか、じゃ、僕は前回、ドラゴンっぽいものを倒して上がったレベルはそのままって事か。それで、ドラゴンも前回なんか変身してパワーアップしたままで、それがまた今パワーアップしようとしてるって訳なのか? やばくない?
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