第二百十三話 島ルート1
船は水平線で粒になって見えなくなる。
本当にこれで良かったんだろうか? 残ると決めたのは自分の意思だけど、自力でここから出るためには、また筏を自作するしかない。
あと、食べ物はまたフルーツ三昧だ。まさかパンドラと別れる事になるとは。予想外だ。
さっきは正直何が起こったのかは分からなかったけど、エリたちが大変な事は確かだろう。パンドラはいい助けになるはずだ。
とりあえず、フルーツとお魚でも調達するか。
狩りして飯を食う。
昨日まではあんなに賑やかだったのに。
なんで僕は迷ってたんだろう。よく考えると島から出る一択だったんじゃ。けどそれはドラゴンの所に行っても死なないって事を知ってる今だから言える事だ。さっきまでの段階ではエリたちに付いて行っても死ぬか、生き延びるためにここに残るかの選択だった訳で、自分自身を咎める事は出来ないと納得する。
風呂を沸かして入る。
昨日までは女の子たちが今入ってるってドキドキした後に入ってたのに。
月が綺麗だ。
けど、月が明るい夜は回りの星々の光が弱くなる。居るだけで明るくなり、他にも影響を与える。なんかエリみたいだな。
どこかの国では、『月が綺麗ですね』というのは、愛してますと言う意味だと聞いた事がある。それへの返しは『死んでもいいわ』だったよな。まあ僕は『死んでもいいわ』とは思えなかったって訳だ。多分、エリ、仲間たちの事は愛じゃなくても好きだったんだと思う。けど、自分の全てを投げ捨てられるかと言われると考え込んでしまう。死んだら終わり。どんなに好きな人が居たとしても、好きというのは一緒に居るから感じられる事で、死んでしまったら好きも嫌いもあったもんじゃない。こう考える自分はわがままなんだろうか?
取り留めない事を考えてるうちに風呂がぬるくなった。奥歯にものが挟まったような物足りなさを感じながらも、この思考は止めにする。何が正解だったんだろう? ヤヌスの言った事が正しいのなら、今の僕とエリ達と行った僕、どちらが真になるかを決めるのは僕自身じゃないのだから。
神々が見てるというのなら、選ぶ僕は行った方だろう。危険を恐れて一人でうじうじしてる今の僕は、僕から見ても気持ちいいものじゃない。今日はもう遅い。明日、筏を作ろう。そして、出よう島を。戦いには追いつけないかもしれないが、やれるだけはやろう。一人になって分かった。やっぱり一人じゃ駄目だ。モヤモヤの原因は一つ。僕は寂しいんだ。
速攻寝て夜明け前に起き、大きな木を倒して抉り船を作る。筏より、一本の木を削り出した方が早いと思ったけど逆だった。この島の木は柔らかいんだけど僕が不器用だ。まあ、初めてする事だからな。なんだかんだで船っぽいものが出来た時には昼を回ってた。
「ハルトー! ハルトー!」
遠くから聞こえる声。モモだ。まだ一日しか経ってないのに、僕はうれしくなり、その姿を探す。砂浜の方だな。僕は即座に駆け出す。
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