第二百十二話 ジャッジメントスタート 再
ゴーン! ゴーン! ゴーン!
まだ鐘の音が聞こえる。さっきあった天秤は見当たらない。
前をフワフワ飛んでたモモがこっちに飛んでくる。
「始まりましたね。審判が」
前と同じくモモが真面目な顔で言う。また、辺りの色彩が消え黒と白だけの世界になる。
目の前に金色の天秤がゆっくりと降りてくる。え、またこれ見るの?
「ジャッジメント、リスタート」
厳かに聞こえるハモった男女の声。
「ちょっと、もっと説明してよ!」
答えてくれないなー。
天秤の上には二つの球。『残る』『出る』って書いてある。さっき傾いた天秤見たじゃん。また見るのか。目の前でぐぐぐっと天秤が傾く。乗ってる球は『残る』だ。
カッと球が光る。そして弾けると、辺りは元に戻ってる。
「じゃ、ハルト、行きましょうか」
モモが差し出す手を握る。
「あんた、何ハルトの手握ってんのよー」
左手をエリがガシッと掴む。
「しょうがないじゃないですか。今、私のスキルが発動したんですよ。ハルトは今、行動に制限かかってるから、海に落ちるかもしれないじゃないですか」
二人は引っ張るが、僕の体は動かない。足に根っこが生えたかのように動かない。
「ちょっと、痛い、痛いって」
「何ハルトふざけてんのよ。行くわよ」
「そうですよ。早く行きましょうよー」
エリとモモは更に引っ張ってくる。だから足が動かないんだって。
「あんたらバカ?」
アイの言葉に二人の力が緩む。
「ハルト、これ二回目なんでしょ。ハルトが『残る』を選ぶルートなんでしょ」
僕は首肯する。さすがアイ話が早くていい。
「じゃ、出発は遅らせるわよ。話してくれるわよね、ハルト」
エリは逆に島へと僕を引っ張っていく。
木陰に椅子とテーブルを出して、喉を潤しながら僕は一部始終を話した。まあ、僕の主観も入ってるから少しは事実との齟齬もあるかもしれない。
「なかなか難易度が高いわね。ハルトが居ない状況じゃ難しいわね」
なんか事ある毎にエリは僕を持ち上げてくれる。なんでだろ。
「いや、僕が居たって変わんないよ」
「何言ってるのよ。まあ、トライしてヤバそうだったら逃げるしか無さそうね。ハルト、エリツーとパンドラも借りるわよ」
「まあ、いいけど」
僕はピーヒャラ吹いてエリツーを呼び出し、エリの言う事を聞くようにお願いしとく。
「私はお前らとは行かないわよ」
パンドラは嫌そうだけど、彼女は強い。
「頼むよ。パンドラ、エリたちと一緒にたたかってよ」
「承知いたしました。主様」
なんかさっきの世界線では反抗期ムーブしてたけど、パンドラは基本的に僕のお願いは全部聞いてくれる。
「あと、ハルト、パンドラに知ってる事全て話すように命令して」
「命令はしないよ。けど、パンドラ、知ってる事をエリに話してね」
ん、一瞬パンドラの顔が歪んだ。
「主様、承知いたしました」
まあ、これで安心だろう。さっきは訳分かんないうちにドラゴンは消えてたし。僕らは桟橋に向かい、船に乗ったみんなを見送る。
「がんばってねー」
手を振る僕にみんなは見えなくなるまで手を振ってくれていた。
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