第二十一話 幸運
「エリ、危ない!」
エリの体がビクンと跳ねるが、丁度攻撃したばかりで反応出来ない。間に合わない! と思った時には体が動いていた。
「キャッ!」
キィン!
「ぐうううっ」
背中を斬られた。けど、間に合った。僕はエリを地面に押し倒した。背中が痛い。モロに食らった。間違いなく重傷だ。僕は死ぬのか……
「ハルトっ!」
エリは僕の下から這い出て立ち上がる。多分、僕はもうダメだな。
「ハルト、ハルト、ハルトッ! だっ大丈夫! あっ」
エリは僕の背中を見て息を飲む。そんなにひどいのか?
「クソッ。運がいい奴だ」
ん、これはスキンヘッドの声?
「ハルト、立ち上がって!」
ん、背中、もう痛く無い? あれ、どうしたんだろう? 訳も分からず立ち上がると、スキンヘッドは折れた剣を手にしている。僕は立ち上がる。良かった。ストラップのおかげで、ひのきの棒は手元にある。
「ハルト、殺さないでね」
エリはそう言うと、残った男たちに向かって行く。『殺さないでね』? 『殺されないでね』の間違いじゃないのか? そうか、たまたま剣が折れて僕は助かったのか。
僕はひのきの棒を握り締め構える。スキンヘッドは折れた剣を投げ捨てると、新しい剣を抜く。眩い程に光る刀身。普通の武器じゃない。祝福された剣なんじゃないか? 僕とスキンヘッドは対峙する。凄そうな剣に体には使い込まれたような金属鎧。どうやったら倒せるのか想像もつかない。
「あのねーちゃんは、やるようだが。残念だな。俺は25だ。それだけじゃない。見てみろ。ミスリルの剣だ。まずはおめーをぶちのめして、次はあいつをギッタンギッタンに叩きのめしてやる!」
「そんな事は、させない。命に代えてもエリは守る!」
そうだ。何を怯えていたんだ。逃げちゃダメだ。エリのお陰で帰って来られた。あの舟が無かったら今も僕は島で一人きりだっただろう。僕を島から連れだしてくれた恩を返さないと。僕は弱い。けど、時間を稼いだら他の奴らはエリが倒してくれるはず。そしたら、一対一ならエリならコイツを倒せるはずだ。命を懸けて時間くらいは稼いでやる!
スキンヘッドは剣を振り上げ振り下ろす。その動きは遅い。遅すぎる。何やってんだコイツ、遊んでるのか? いや、奴は強いはず。牽制なんだろう。それか僕がレベル5だから舐めくさってるのかもしれない。僕はその剣の腹をひのきの棒で叩いて逸らす。
バキッ!
えっ、剣が簡単に折れた。もしかして見かけ倒しの粗悪品だったのか? ん、奴の腹ががら空きだ。
ボゴン!
軽く鎧の上から腹を棒で殴ったら、悲しい事に棒は折れてしまった。
「ぐぅうううう……」
スキンヘッドは泡を吹きながら崩れ落ちる。鎧が凹んでいる。剣だけじゃ無く鎧もハリボテだったのか?
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