第二百八話 バトルルート5
ピシッ。ピキッ。
首を後ろに仰け反らしたままでドラゴンは立ち上がる。何かが割れるような音を立てながら。
ゴキュ。
ここまで聞こえる腰の骨を鳴らしたのをでっかくしたような音。仰け反ってたドラゴンの首が元に戻る。それと同時にバリバリ音を立ててドラゴンの表面が落ちる。表面を覆ってた鱗だ。くすんだ黒い鱗が落ち、下からはギラギラ光った黒い鱗が見えてくる。さっきまで濁っていた目に光が戻る。
「アイ、あれってドラゴンゾンビなの?」
「違うっぽいわね」
エリが叫ぶ。それにアイが答える。
「もしかして、脱皮? さっきの煙はもしかして、脱皮の隙を守る繭みたいなものなの?」
「まだ動いてない。先にやるわよ」
エリがゴールドを手に駆け出す。エリがたどり着く前に、アイがバナーヌからビームを放つ。それは全て命中し、ドラゴンに当たり弾ける。さっきまではバナーヌのビームはドラゴンの鱗を削っていたのに、今はただ弾けてるって感じだ。モモとモモツーが舞い上がり、ドラゴンに突撃する。当たってもカンカンと軽い音がするだけだ。エリがドラゴンにゴールドを突き刺す。さっきは素手で吹っ飛んだドラゴンが微動だにしない。ゴールドの槍はひしゃげてる。女の子たちは容赦なくドラゴンに攻撃していく。けど、ドラゴンは微塵の痛痒を感じていなさそうだ。
「グゥオオオオーーーーン」
ドラゴンが天に吠える。その体からはさっきのくすんだ鱗は全て落ちて、全身を輝く黒い鱗が覆っている。それになんか大きくなってないか? 一番近くに居るモモと比べたら明らかにデカくなっている。
「ゴォオオオオッ!」
ドラゴンが僕の方を見て吠える。ドラゴンから僕に向かって風が吹いて髪が攫われる。何故僕? ドラゴンに纏わり付いてた女の子たちが吹っ飛ばされる。
「大丈夫かっ!」
「大丈夫よ。突風にやられただけ」
エリが答えて立ち上がる。他のみんなも大丈夫そうだ。
「やっと鑑定が届いたわ。撤退。一時撤退するわ」
エリの言葉にみんな打ち合わせてたんだろう。僕に向かって走ってくる。僕は咄嗟に逃げる。だってみんなの後ろからドラゴンが付いてきてるんだもん。
僕は全力で走る。こんな僕でもみんなに負けない一つの特技。逃げ足だけは一流の自身がある。しばらく走ると誰もついて来てないので、ドラゴンも見えないから立ち止まる。森抜けたから、ドラゴンはデカいから森にひっかかってるんだろう。
「ハルト、待たせたわね」
待ってないわ。腐ったブレスを完食した人がまず森から現れた。失礼かもしれないけど、つい距離を取ってしまう。
「飛べる私たちより速いって反則ですね」
「もっとブドウ食べないと」
モモとアイもやってきた。良かった。エリと二人っきりは緊張し過ぎる。僕も食われるんじゃないかと。
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