第二百一話 チェリー
「どうしたのよ? 山登りで疲れたの?」
エリがパンドラを握って僕にシャワーをかけてくれてる。
金色の水着を着て……
僕は椅子に座って雑に汚れを落とす。
「そうだね……ちょっとはしゃぎすぎたよ」
まあ、冷静に考えるとそうなるよな。上品なエリが裸で待ってる訳ないもんな。
アイは浴槽で気持ちよさそうにグデーとしてる。最初は浴槽が熱い熱い言ってたけど、今はもう慣れたりみたいだ。ここの岩は特殊で、直接火にかけてもそんなに熱くならない。軽くて細工しやすくて丈夫で熱も伝わりにくい。まるで浴槽になるためにあるような岩だ。
モモは飛ぶ、入浴する。飛ぶ、入浴するを繰り返してる。お風呂で暖まってから、上空を飛ぶとヒンヤリで気持ちいいそうだ。
「ハルト、目ー瞑って」
「え、なんで?」
つい、少し後退る。誰だって嫌だろう。ライオンや虎の前で目を瞑るのは。
「頭、洗ったげるから。こう見えて、あたし、人の頭洗うの得意なのよ。毎日アイの髪の毛洗ってるのよ」
「ちょっと、何、私がエリに髪の毛あらって貰ってる流れになってんのよ。あんたが無理矢理洗うんでしょ。私は実験台だったって訳ね。何度首やられた事か」
なんかアイが恐ろしい事言ってる。首やられた? 折られたのか? もがれたのか?
「失礼ねー。それ、アイがまだひ弱だった頃の事でしょ。はい、ハルト。目を瞑ってね」
エリは僕の前に座って首をすこしコテンとしてる。あざとい、あざと過ぎる。アイはなんか作為を感じるが、エリは天然だ。中身がゴリラだとしても、こんなお姫様のような女の子が頭洗ってくれるのに抗えるだろうか?
「じゃ、じゃあ、よろしく」
僕は目を瞑る。なんかチューするみたいだなー。ヒンヤリした感触。頭にシャンプーをかけられたみたいだ。目を瞑ると他の感覚が鋭くなるなー。え、唇になんか冷たくてやらかいものが当たった。とっさに目を開けると金色。え、エリの水着? 胸? それはヤバすぎだろ。エリ、気付いてないのか? それともわざと当てたのか? 僕は頭の中が真っ白になる。視界の端になんか飛んでる。パンドラ、手になんか持ってる。チェリー? あ、スライムが落としたのを収納にかくしもってたのか。
「おら、豚共! 主様が口付けしたこのチェリー。幾ら払う? 有り金全部もってこいや!」
「パンドラ、そういうイタズラは止めようね。そんなの誰も買わないよ」
ああ良かった。今ので冷めた。ドキドキドクドクでやばい事なりそうだった。僕はサッとパンドラからチェリーを奪うと。口に入れる。チェリーがチューしたチェリーは甘酸っぱかった。
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