第二話 絶望
「ゴホッ。ゴホゴホッ」
僕は口からしょっからい水を吐き出す。ここは砂浜? 良かった。なんとか溺れないで済んだ。
多分ここはスライム島。始めからおかしかったんだ。なんでわざわざスライム島なんかに向かったのか。
僕たち冒険者パーティー『紅蓮の園』が拠点にしていた街『ポートカイン』から行ける巣窟のほとんどは、船に乗ってから行く。
ちなみに魔物が自然発生する魔窟では、地下に続いているものは迷宮、地上に広がっているものは巣窟と呼ばれている。僕たち冒険者は魔窟に向かって、そこで魔物を倒して素材を得たり、宝箱から財宝を発見して売ったりして生計を立てている。あと、冒険者ギルドから依頼を受けて報酬を得ている。
冒険者は9つのクラスに別れていて、その等級はその実力を現し、僕らのパーティーでは、僕だけがGクラスで、他のみんなはEクラスだ。何故、差がついたかと言うと、他のみんなは戦闘スキル持ちで、僕は非戦闘スキル持ちだったからだ。
成人の日、16才の誕生日にスキルが発動する。僕のスキルは『ドロップ率アップ』、魔物が落とすドロップアイテムの確率が上がるものだ。かなりレアなスキルらしいけど、詳しい確率は分からない。そして、冒険者になって、駆け出し同士で組んで上手く行ってたと思っていた。僕自身はほとんど戦えないけど、僕らのパーティーは他の駆け出しパーティーと比べて明らかにドロップアイテムが多くて、その売買で潤っていた。そして、あと少しで、みんなが初心者卒業の証となるDクラスに上がる時に、ジェイルが『スライム島』に行こうと言い始めた。『スライム島』とは、魔物がスライムしか出ない島の割には本土から遠く、その船賃より島での稼ぎが少ないから余程の事が無い限り人が訪れ無い島だ。ジェイルが言うには、スライムとの戦闘経験が少ないから、練習がてら行ってみようとの事だった。金にうるさいジェイルにしては変だと思ったけど、まあそんな事もあるだろうと思っていた。
「どうしようか……」
もう、船は見えない。僕は無人島に取り残された。絶望感に打ちひしがれる。なんで僕がこんな目に……
確かに僕は弱かった。けど、出来る事は頑張っていた。炊事洗濯に、冒険の時は荷物持ち。僕たちのパーティーは僕に払うお金を装備にまわしたら、Dクラスに上がれるだろう。僕の存在は装備品以下だったのか。なんとかしてここから脱出して、あいつらを見返してやる。強くならないと。けど、まずは生き延びる事だ。
島には湖があったから、水は湧かしてなんとかなるだろう。あと、魚介を捕まえれば食べ物はなんとかなるはず。僕は魔法は全く使えないから火をおこすのはなんか昔ギルドで教えていた木を擦り付ける方法でつけるしかない。まあ、島に居る魔物はスライムだけだから、囲まれない限りなんとかなるだろう。どうにかして生き残って、誰かがこの島にやって来るのを待つ事にしよう。
そして、1年経った。
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