第百九十八話 フードファイト(アイ視点)
エリは蒲焼きを見てボソボソ言うと、心なしか目を見開いて、いつもはモモがファーストアタックなのに、エリが皿を差し出した。奴は多分肉を鑑定したわ。そして、なんらかの効果に気づいて食いまくろうとしている。
私は蒲焼きを見る。デカいわね。確かにシーサーペントはデカかった。けど、どう考えても奴らよりデカい。多分これは亜種の肉だ。私たちが見てないうちにハルトが倒した亜種、しかも強力な奴の肉。もしくはそのドロップかもしれない。昔何かで読んだ事がある。祝福された食材には力が宿る事があると。間違いない。これは何かあるわ。
私はエリの皿の上に皿を差し込んで略奪する。エリが何か言ってるけどやられた方が悪い。従業坐臥、いかなる時もスキを見せたら負けだ。私はエリに食われないうちに一気に蒲焼きを口に入れる。だてにいつもフルーツを盗み食いしてる訳じゃないわ。見よ! この高速イーティング。うっ熱い。けど、跳ね上がった私の耐久は火がついてる食べ物でも軽く食べれる。私たちにとって食事は戦いだ。先に食べた者がより強くなれる。私は勝利を噛み締めながら、うなぎを噛み締める。ダブル噛み締めだ。な、ナニコレ!
うっ、うっ、美味いぞー!! 口から何かが溢れ出しそうだ。
表面はカリッと香ばしく、中はホクホク。ハルトがどれだけ手間暇かけて焼いたのかがよく分かる。甘くてしょっぱいタレに仄かに香るなんかの香辛料。その少しのピリッがいいアクセントだ。私は一気に飲み込む。ふぅ。胃の辺りが暖かい。吸収してる。これは間違いなくなんらかの力が私に流れ込んでる。だてに魔法を学んで力の流れに敏感な訳じゃない。このホカホカ具合、優しい力。間違いない。これは命のモモを食べた時に似てる。多分この蒲焼きを食べるとHPが上がる。一次的か永続かは、エリの態度から一目瞭然だ。永続だわ。
私たちの皿に蒲焼きが乗ってる。何、今の? 強くなった私の眼力をもってしても何があったのか分からなかった。ハルトが高速で蒲焼きを配った? まだまだ私は至らない事を痛感する。それよりも蒲焼き蒲焼きぃ! 私はチョップスティックスで一気に蒲焼きをかっこむ。空になった皿を差し出すとハルトが蒲焼きを乗っけてくれる。私は無我夢中でそれを食べる。うっ、さすがモモは早いわ。何もかも考えて無さそうな顔で、ただ美味しいから食べている。三人の中では私が一番小柄。しかもエリはなんか装備の力でめっちゃ食べられる。負けられないわ。私には二人には無い根性というものがある。私は一度エリに踏み殺すされかけた。その時の事を思い出すと食べる事なんてどうって事は無い。
そして、私たちの戦いは続いていく。
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