第百九十六話 お掃除(エリ視点)
一昨年の夜、本当にやばかったです。夜、雨の中原付で移動してたんですが、トンネルをくぐって出ると、その前の道路が冠水。30センチ以上水が溜まってる所に突っ込んで、まずいと思ってなんとか歩道に引き上げました。エンジンは動くけど、前よりパワーダウンしてます。
その冠水したポイントはいつもはそうならないんですが、あまりにもな集中豪雨でそうなったみたいです。そこは緩い坂道の終わりの場所で、道路の側溝を流れた水が溢れてました。側溝から、1メーター近い噴水みたくなってました。当然車も進めずに路肩に止めてありました。
私自身は濡れただけでした。皆様もお気をつけください。大雨の時は出来るだけ外に出ないのが一番だと実感しました。
「終わったわね」
あたしはゴールドと分離する。ゴールドはそのまま縮んで一枚の金貨になる。最高ね。一緒に戦えて、武器になって、しかも最期にお金になる。あたしのゴールドは最高だ。
もう動くシーサーペントは一体も居ない。
「どう、モモー、メロン、メロンはあったー?」
モモとモモツーは低空で旋回してる。多分、メロンを探している。
「見当たらないですねー」
あたしも戦いながらメロンを探してた。けど、今のところ一個も見つけてない。やっぱりハルトに逃げられたのが痛い。もしかしたら、ハルトとの距離があると、そのスキルの効果は無くなるのかもしれない。まあ、けど、今回の目的は戦闘訓練。上がったステータスに慣れるのが目的だ。みんな無傷だし、圧倒的だった。大量のシーサーペント相手にこれだけ出来ればドラゴン相手にも問題ないだろう。
「あー、疲れた。お腹空いたわー」
アイはバナーヌを抱き締めたまま寝っ転がってる。まだやる事は残ってるのに。
「疲れてるかもしれないけど、まだ掃除が残ってるわよ」
そう、辺りはヤバい状態だ。砂浜はシーサーペントの血と死骸に塗れている。明日ここを出るけど、さすがにこのまま放置しとく訳にはいかない。
ここはあたしとハルトが初めて会った場所。
もし、ここでハルトがあたしを助けてくれなかったら、あたしがこの島に流れつかなかったら、今の自分は無い。あの時のハルトは、髭もじゃでボロボロの服でちょっと怖かった。けど、あの姿のハルトを見たのはあたしだけ。あたしの思い出だけのものだ。思い出って綺麗になるものらしいのに、ぜんっぜん綺麗じゃない。
けど、ここがグチャグチャなままは嫌だ。何年か後に、ハルトとここにまた来て、サーペントの骨がゴロゴロあったら、ムードもへったくれもあったもんじゃない。
なんかやる気が無いモモとアイを激励しながら、掃除していく。海に流しても波で戻ってくるから、全力で戻って来ないとこまでぶん投げる。戻って来たのを掴んでぶん投げる。あたしたちは何してんだろう。海や川に行ったら何となく落ちてる石を投げたりする。それと同じようなものだと自分を納得させる。アイなんか器用に死骸を回転させて水切りしてる。相変わらずサイコパスだ。
どうにか粗方片付けて、海の比較的綺麗なとこに入って汚れを落とす。それにしても辺り一帯が生臭い。まるで魚屋さんにいるみたいだ。
「なんか、海が嫌いになりそうですね」
モモが海に座って浸かって弱った声を出してる。あ、スイカ二個浮いてる。生意気、上から押さえて沈めたい。
「私は、蛇が嫌いになりそうだわ」
アイも座ってる。上から見ると水着が浮いて中が見えそうだ。これも逆に注意しとかないとハルトには目の毒だ。
「けど、あたしたちはやり遂げたわ。シーサーペントはレベル20の魔物よ。これだけ倒したら、レベルも上がってるはず。ほらほら楽しみでしょ。今晩ハルトが寝た後にお楽しみステータスタイムが待ってるわよー」
「そうですよねっ」
一瞬でモモの目がキラキラになる。
「私は十分強くなったから。あんまり興味ないわね」
そう言うアイの目もキラキラだ。
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