第百八十七話 透視
「まあ、いいだろう」
自称神様の男性の顔が前を向き口を開く。もう片方の女性の顔は後ろを向いてるが、明らかに普通だったら首の骨がいっちゃってる形だ。
「あのー、女の人は、大丈夫なんですか? あり得ない角度になってますけど?」
つい、心配してしてしまう。なんか女性が酷い目に会ってるようで可哀想だったから。
「大丈夫だ。神様だから。そんな事より、今の状況とか気にならんのか?」
そりゃ気になる。危機感が薄いように見えるかも知れないけど、僕はこの島に置いて行かれてから変わった。何も無く明日生きていけるかの不安しか無かった日々。それを乗り越えた僕は、どんな事が起きても全力を尽くせばなんとかなる。それでもなんともならない時でも最後の最後まで諦めない。そう思えるようになったから、大抵の事が起きてもあんまり動じなくなった。
「じゃ、聞くけど、今ってどういう状況なの?」
今度はグキッと首が回って女性の方がが話し始める。その顔はなんか汚いものでも見てるかのように冷たい。
「神と聞いても恐れないのか。普通の者だったらタメ口は止めるのに。まあ、少し覗かせて貰うか。私は全てを見通せる。私の前では全てのものは丸裸同然だ」
タメ口が嫌なのか? けど、なんか、あんまり強くなさそうなんだよね。この人、いやこの自称神様。だから自然に口調がこうなった。なんで弱そうかって、服から覗く手足が華奢だから。ほのかに胸が膨らんでるように見える。ノーブラだ。けど、さすがに何とも思わない。逆に気づかなければ良かったと後悔する。
ヤヌスさんは僕の体を舐めるように見渡す。全てを見通すって、今、僕を見てなんか妄想でもしてるのか? それとも男の夢の能力、透視能力でも持ってるのか?
「みっ見えたーっ! げっ、な、なに、何なんだお前。巨大! デカすぎる」
えっ、つい、股間に手を当てる。本当に透視なのか?
「違うわ! デカいのは存在だ! 私の倍、倍以上の力。バグ、チート、その類のものなのね。そういう事ね。誰よ。こんなクソみたいなスキル与えたのは。落ち着け、落ち着くんだ。この場さえしのげばいい」
存在がデカい? 態度がデカいって事か? けど、いきなり化け物みたいな奴に、『人の子よ』とか上から目線されたらこっちだってそうなるよ。礼儀正しく接せられたらこっちもちゃんとするよ。
それに、また僕のスキルをバカにされた。昔のパーティーでの事を思い出す。少しイラッとするけど、なんかこの人、慌て始めたから逆になんか可哀想になる。情緒不安定な神様だなー。
また、今度はグキッと男の人の顔がこっちを向く。え、胸が絞んで、手足が筋肉質になった。なんかキモ。
「それでは旦那様、何からお話し致しましょうか?」
うわ、いきなり感じ変わった。スマイル。貼り付けたかのようなわざとらしいやつ。そうだ、ちょっといい服屋とかに入った時に店員がしてくるやつだ。こっちは静かに好きなもの選びたいのに、いろいろ話して勧めてくるウザい笑顔だ。
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