第百七十九話 羞恥心
「大漁、大漁だよー」
僕はフルーツを抱えて砂浜で声を張る。僕に向かって妖精が矢のように飛んでくる。そして僕の目の前でピタリ止まる。
「主様、申し訳ございません。あの豚共がくっちゃべりまくりやがってお迎えに参れませんでした」
くっちゃべる? ん、しゃべるって意味だよね。
「はいはい、そうなんだねー。女の子だから話は好きだもんねー。けど、パンドラ、みんな仲間なんだから、豚共って呼ぶのは止めようねー。パンドラだって嫌でしょ? 豚って呼ばれたら」
「いえっ。そんな事無いです。主様にならなんて呼ばれても嬉しいです。むしろ呼んで下さい。白豚とかメス豚とか!」
パンドラが顔ギリギリまで詰め寄ってくる。自分がやられたら嫌な事は人にしないように言いたいんだけど。んー、逆効果なのか?
「じゃあ、僕以外の人に豚って呼ばれたら?」
「コロス。殺します。ぎったんぎったんにして魚の餌にします」
言う事がいつも過激だなー。けど伝わったかな?
「ほら、だから、エリたちも豚共って呼ばれるのは嫌だと思うから止めようねー」
「はい、かしこまりましたーっ」
返事はいいけど、多分、ずっと豚共って呼ぶんだろなー。
「ごめーん。いっぱい持たせて受け取るわよ」
エリが駆け寄ってくるとフルーツを幾つか受け取ってくれる。出来ればドリアンを取ってもらえると嬉しいんだけど。臭いから。ん、おでこに何か書いてある。性悪? なんかの罰ゲームだろうか? 見なかった事にしとこ。
そしてモモとアイもやってきてフルーツを持ってくれる。いつもはパンドラが収納してくれるんだけど、素手で持つのは意外に大変だ。果物ってブヨブヨしてるし。落としたらフルーツは割れると思うけど、彼女らは多分潰れてても喜んで食べる。それを見るのはさすがにしのびない。よく見るとモモの額にもなんか書いてある。胸デブ? あ、こりゃなんかのゲームしてアイが勝って書いたんだな。ツッコんだらセクハラっぽいから止めとこう。
そしてテーブルにフルーツを並べていつもの宴が始まる。僕のフルーツは無いけど、代わりにパンドラがお菓子と紅茶を出してくれる。パンドラがフルーツに粉を振って、女の子たちが金色の果実を必死に食べる。そして、全身を金色に輝かせながらまたつぎのフルーツを食べる。なんか一生懸命食べてるのって見ると心が和むよね。みんな金色だけど。太陽を照り返してギラギラだ。シュールなコントみたいだ。慣れたけど。え、ドリアンが虹色に輝いている。あ、新しい芸なのか? それを躊躇い無くエリが食べる。エリ、今度は七色に光ってる。どういう仕組みなんだ? 人間なのか? なんかおでこには性悪って書いてあるし。怪人? 昔、広場で講演されたのを見た五人組のヒーローにあんなのが居たような。ジョッカー電飾隊? しばらくエリは七色に光ると、また金色の果実を食べて金色に戻る。みんな食べるのに夢中で自分らの姿は全く気にしてないみたいだ。
恥ずかしく無いのだろうか? 女の子だからかなー? 女の子ってちょっとパンツが見えたら恥ずかしがるのに、ほぼ下着の水着だとなんともないって。羞恥心の発生条件が分かんない。それと同じく体の色が変わるのはなんとも無いんだろう。額には性悪とかデブとか書いてあるし。それにしても女の子って不思議だなー。
けど、見慣れたけどいつ見ても飽きない光景だ。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。